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風見が丘アモン・スール


 翌日、ホビット達はアラゴルンが予想したとおりの反応を見せた。時間が惜しいためエレンミアが味方で旧知の仲だという事だけを説明し、先を急ぐ。四人の中で一番好奇心が強いピピンはエレンミアにたくさんの質問を浴びせ、その後ろを歩くサムはまだ夢を見ている気分といった表情を浮かべていた。
 日が傾き始めた頃再び野営地を探していると、遠くに風見が丘アモン・スールが見えてくる。あの場所ならナズグルに気づかれる事もないだろう。アラゴルンもそう考えたらしく、馬だけ下に繋いでおいて6人は中腹の窪みになっている場所で落ち着いた。

「これを。常に肌身離さず持っておけ、私は偵察に行くからここにいろ」
「偵察なら私が行こうか?」
「いや、万が一急襲された時を考えてエレンミアがホビット達の側にいた方がいい」

 そう言うと、アラゴルンは下に降りて夜の闇の中に消えていった。四人は剣を持つのが初めてなのか、慣れない手つきで剣を振ってみたり刃を眺めたりしている。エレンミアが大してする事がなくて遠くを眺めていると、腹を空かせたらしくメリーとピピン、サムが火を起こそうとしていた。

「火をおこすのはまずい。腹でも減ったのか?」
「うん・・・・・・」
「塩漬けの肉があるからとりあえずこれで今は我慢してくれ」

 裂け谷を出る時に貰っていた肉を渡し、エレンミアはあたりを見渡す。アラゴルンからホビットは一日三食以上食べると聞いたから、これだけで足りるはずがないだろう。だが今自分が持っている食料で火を通さないで食べれるものはあの塩漬け肉しかない。果物でも探しに行こうかと思ったがアラゴルンから彼らのそばにいてくれと頼まれたため動けない。
 どうしたものかとしばらく考え込んだが、偵察に行ったアラゴルンが帰りに何か狩ってくるのを信じて待つことにした。ここらは野生動物が多いみたいだし、野兎ぐらいはいるだろう。ふと気を緩めると、いままで溜まっていた疲れが急に襲ってきてエレンミアは壁にもたれかかって瞳を閉じた。エルフである自分には人間と同じような睡眠をとる必要はないが、こうすると歩くよりずっとしっかり疲れをとれる気がした。少しの間なら大丈夫だろう。意識が遠のいていくなかで金属がすれ合うような音がしたが、そのままエレンミアは眠りについた。




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 エレンミアと同じく睡眠をとっていたフロドは香ばしい肉が焼けるにおいと三人の話声で目を覚ました。起き上がって振り向くと、残りの三人が火を起こして食料を調理しながら食べていた。

「トマトが焦げちゃった」
「ベーコンは焼いちゃ駄目か?」
「何やってるんだ!!」
「トマトにソーセージ、かりかりのベーコンもあるよ」

 煙に気が付いたエレンミアもぎょっとして目を開く。

「ばっ、何してる!!」
「あなたの分もとっておきましたよ」
「消せ馬鹿!」

 エレンミアが止めに入る前にフロドが足で焚火を踏み消す。それと同時にフライパンや焼かれていた食材がひっくり返った。ピピンがトマトが潰れたと呑気な事を言っていると、突然周囲に耳を劈くような悲鳴が響き渡る。すぐにナズグルだと気づいたエレンミアは下を眺める四人を連れて階段を駆け上がった。
 全員に剣を抜かせ、中央に固まる。今戦えるのは自分しかいない。愛刀の柄を握りしめ、エレンミアがいつナズグルが来てもいいように構えていると、背後からフロドが息を飲み込む音がしてエレンミアもそちらを向く。
 黒衣と古びた剣、何者もを退かせるような恐怖を纏ったナズグルがそこにいた。続けて他の場所からも四人のナズグルが現れる。数は同数だが、戦力差としては圧倒的に不利な状況にある。先手を打ってもその隙にホビット達が他のナズグルに襲われる可能性があり、後手に回っても全員守りきれる保証は悔しいがない。

「(ここは・・・・・・、不意を突いて逃げ道を作るしかない)」

 馬が無ければ一度に5人捕まるなんて事はないはず。エレンミアは一歩足を踏み出し、先頭のナズグルに切り掛かった。


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