Never Change | ナノ

邂逅


「久しぶりだなアラゴルン」
「久しぶり、まさかこんな場所で会えるなんて思ってもいなかった」
「私もだ。父上に頼まれてブリー村まで行くつもりだったんだが、手間が省けた」

 短剣を腰の鞘に戻し、エレンミアは暗闇の中から真っ白な馬を連れてきた。気を踏んだ音はこの馬が出したのかもしれない。

「どうしてここを?」
「高い場所からナズグルがいないか確認していたらホビットを連れているお前が見えたんだ」

 話を聞きながら、アラゴルンはエレンミアが筒型の髪飾りを横髪に付けている事に気がついた。最後に会った時は全部無造作にまとめているだけだったが、いつの間にかちゃんとするようになったらしい。

「美しいな。その髪飾り」
「だろう?この間ロリアンを訪れた時にハルディアから貰ったんだ」
「ハルディア?」
「国境警備隊隊長の。会った事ぐらいあるだろ」

 確かに彼には何度も会っている。森へ入って奥方と面会する時にはいつも彼が案内してくれているから少し会話をする事もあるぐらいには親しい。だが疑問なのは何故彼がエレンミアに髪飾りを贈ったのかという所だ。理由を聞いてみようかと思ったが、まだ恋人でもない自分が果たしてこんな事を聞いていいのかと思い踏みとどまる。

「いろいろ話したいことはあるが、今夜はもう遅い。野営に戻ろう」
「ああ」

 朝になったらホビット達は驚くに違いない。そう思いながらエレンミアと一緒に野営に戻ると、焚火の光でエレンミアの顔が照らされる。エルフはもともと美しい種族だが、叡智と悲しみが積み重なることでその美しさはいや増していく。彼女と最後にあったのは二十年前だが、あの時より更に美しくなっている気がしてアラゴルンは小さく胸を高鳴らせた。

「エレンミア、あれからお前は何をしていたんだ?」
「父上に頼まれて敵の情報を集めたり各地を旅したり、昔と変わらないよ」
「・・・・・・恋人を作ったりはしなかったのか?」
「旅で各地を転々としているんだからそんな暇はない」
「そう、か」
「そういうアラゴルンはどうなんだ?」
「私も恋人はいない。・・・・・・太陽を追いかけている最中だからな」

 二人の間に沈黙が流れる。アラゴルンが横を向くとエレンミアはじっと焚き火を見つめていた。

「いつまで追いかけるつもりだ」
「この手で捕まえるまで」
「・・・・・・いくらお前でも、それは無理だ」
「諦めは悪いたちだからな。それに希望があると信じている」

 おやすみ、と言って横になる。エレンミアはまだ起きているだろうが今夜はここまでにしよう。話をするのは裂け谷に行く途中でもできるし、着いてもしばらく彼女も館に留まるはずだ。
 アラゴルンが寝始めるとエレンミアは髪をまとめて一つの大きな三つ編みにした。これですっきりした。戦う時は少し邪魔かもしれないが、ナズグル達さえ現れなければ剣を抜くこともないだろう。
 
「(なんで諦めないんだ)」

 あの日から二十年が経った。エルフである自分からすればついこの間のことだが、人間の彼にとってはもうかなり昔の出来事だ。いい加減諦めて他を探せばいいのに、彼はまだ同じものを追いかけているという。これも種族間の違いなのだろうか、それとも彼が特別あきらめが悪いのか。少なくとも自分が同じ状況だったらとっくに諦めていてもおかしくない。

「駄目なんだよ・・・・・・私じゃ」

 ぱちん、ぱちん、と火の中で枝が爆ぜる。胸に下げた銀の首飾りがゆらりと揺れた。

 
 

 
 

 


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