私とかずくんは幼稚園から一緒にいて、所謂幼馴染みで。私の初恋は当然ながらいつも傍にいてくれたかずくんだった。
私よりかずくんのほうが一つ年上だったから、かずくんが幼稚園を卒園するときは、とても悲しくて、びーびー泣いた記憶がある。





「うぇええええやだーーー!かずくんとばいばいやだよおおおおお!」



「なまえっ、お、おれだってやだよ!」



「うぇっ、かずくんなまえのこときらいっ?だからばいばいなのっ?」



「ちっ、ちがう!!おれは、なまえのこときらいじゃない!でも、おれはなまえよりいっこうえだから、なまえよりさきに、そつえんしきしなきゃだめなんだ!」



「じゃあ、なまえもかずくんといっしょにそつえんしきするううう!」



私とかずくんは、学区が違うから、卒園したら小学校も、中学校も別々になってしまうから、私はかずくんと一緒にいたくて必死だった。



「わがままいっちゃだめだなまえ!おれだってなまえとはなればなれ、いやだけど、こーこーせーになったら、なまえをむかえにいくから!」



「ひっく、ほっ、ほんとう?なまえ、かずくんにまたあえる?」



「おう!なまえがこーこーせーになったら、けっこんするんだ!そーしたら、なまえは、おれのおよめさん!」



「!なまえ、かずくんのおよめさんになれるの!?」




「もちのろんだぜ!だから、それまで、おれいがいにすきなひと、つくっちゃだめだからな!なまえは、おれのおよめさんになるんだから!」




そういって、かずくんは幼稚園児なのに、私の唇にちゅーってした。多分、彼にとったら、それは、誓いのキスだったんだろう。
そうして、かずくんは幼稚園を卒園した。





「……………思えば、なんで、希望ヶ峰学園入学した時に迎えに来てくれなかったの?」



「あ?だ、だってよォ……俺がまだ、結婚出来ねぇ歳だったから………」





あの時は、何歳で結婚出来るか、とか知らなかったし。
そうつぶやいた彼のなんと顔が赤いことか。




「だからよォ、なまえが入学した時は、まだ俺17にもなってなかったし、無理だろ?」



「別に私はそんなこと気にしてなかったのに………あーあ、こんな事なら、かずくんが迎えに来てくれるまで恋人作って高校生生活満喫しとけばよかった!」



「ハァ!?だっ、だめだからな!お前、約束忘れたのかよ!」




「だって!すぐに迎えに来てくれると思ってたのに!髪ピンクに染めて、ヤンキーみたいになってるし、おまけにソニア先輩のケツ追っかけてたら、誰だってそう思うわ!私は、小学校も中学校も好きな人作らなかったのに!」





「女がケツとか言うな!ソニアさんは違うって言ってンだろ!」




「かずくんは知らないと思うけど、私って結構モテたんだから!」




「知ってるっつーの!お前の告白の呼び出しの噂聞く度にハラハラしてた俺の身にもなれってんだ!」




世界に絶望的事件が起きて、復興作業が未来機関で進められる中、こんなふうに喋ることができる。笑いあって泣き合うことができる。
それがとても、奇跡に近いと思う。



「……………なまえ」




「んー?」




「なんか、すげえ遅くなっちまったけど……俺のお嫁さんに、なってくださいッッ!」





「ふふっ、幸せにしないと、オシオキだから!」





「だーーーーッッ!やめろ!そのキーワード!」



じゃあ、この奇跡のなかで、誓いの口づけを、あなたに。





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