イカスミのリゾット


結局、オレの童貞卒業は、知歳の「もっとお勉強をしてから」という言葉によって延期になってしまった。初めはなんで、って思ったけど、知歳の言葉には確かに説得性があって、オレは頷く以外に行動を取らざるを得なかったワケで。決して、知歳の命令口調じゃないけどNOを言わせない言い方にキュンときたわけじゃない。お、オレはそんなドMじゃねェし!

かくいう知歳は、今日も朝から真面目な図書委員チャンで。


「おー神本っち!おはようだべー」



「おはよう、葉隠くん。はい、これ。」



「!この本って、」



「この間言ってた、オーパーツについての評論本。図書室の在庫処分の時に見つけたんだけど、よかったら貰ってくれる?」



「い、いいんか!?だってこれ、絶版になった幻の一冊だべ!?」



「うん。ここ十数年、誰も借りてないから、クタクタの埃まみれなんだけど。誰にも読まれずに置いておくくらいなら、葉隠くんが貰ってくれた方が、私もこの本も嬉しいし。あ、悪いと思ってるんなら、古本価格で100円でどう?」



「い、いや!そりゃ困る!今月はピンチなんだべ!あ、ありがたく頂戴するべ!」



「ふふふ、素直でよろしい。」





「あ、神本ちゃーん、おっはよー!」



「おはよう、朝日奈さん。あ、そうだ。朝日奈さん。この間借りていった『ドーナツのアレンジレシピ100選』、明後日が返却期限だから、覚えておいてね。最近、期限を守らずに延滞する人が多くて困ってるの。」



「あっ!すっかり忘れてたー!ごめん!明日には持ってくるから!!」





「神本さん。」



「霧切さん、おはよう。」



「えぇ、おはよう。今日は図書室は空いてるかしら?」



「うん、今日は昼休みに書庫整理があるから使えないけど、それ以外の休み時間と放課後は空いてるよ。」



「そう、わかったわ。ありがとうね。」




……よくもまぁ、あんなにもキャラが違うもんだ。オレの相手してる時は、そりゃあもう意地悪に北叟笑むっつうのに。




「……くん、…桑田くん」



「……ファッ!?な、なんだよ、神本」



「どうしたの?風邪?」



「やっ、ちげーけど。」



「ならいいけど…。はい、桑田くん」



知歳が一冊の雑誌を渡してきた。色んなアイドルとかロックバンドとかの載った、隔週で出る雑誌の最新号。



「桑田くん、この雑誌、貸出申請してたのに、図書室に置いてったでしょう?」



「へっ?そ、そーだっけ…。」



そんなこと全く覚えてない。っつーか、オレは図書室に足を向けた覚えすらない。



「もう。返却期限は2週間後だから。覚えといてね。」



「あ、あぁ……。」



雑誌を受け取るとき、知歳と目があった。多分、このクラスじゃ、オレだけが知ってる、裏の顔の知歳。その女郎蜘蛛みてぇな知歳の眼光がオレを射抜いた瞬間、オレの身体が一気に沸騰したみてぇに熱くなった。多分、この言葉のやり取りにはそれ相応の意味があるんだろう、知歳にとっては。

知歳が自分の席に着いてくのを見たあと、オレはその雑誌をパラパラとめくった。するとその中に、一枚の小さな紙切れ。


"昼休み、空き教室で 神本 知歳"


そう丁寧に書かれた紙切れに、少しだけ、息が止まった。








昼休みになって、飯を適当に食ったあと。急いで空き教室に向かう。あんまり走んのは好きじゃねェけど、自然と足が速くなる。

空き教室前、少し息を整える。この間は息切れしたまま教室に入って、知歳に見透かされたように笑われたから。

ドアを開けると、知歳はまだいなくて、少ししょぼくれる。何だまだ来てねぇのか。適当な机に腰を掛ける。本来は、座るために作られたんじゃねぇそれだけど、オレみたいなのが椅子におとなしく座ってても、カッコがつかねぇだろ。



「あ、怜恩くん、もう来てたの?」



空き教室に入ってきた知歳。手には弁当箱が入った小さめのトートバッグを持っていて、オレのほうが早かったことに若干驚いている。オレのこと名前呼びってことは、やっぱり、そういうこと目的で呼び出したんだろう。



「知歳、」



「ふふ、そんなに楽しみだった?ごめんね?遅くなって。」



ドアを閉めた知歳が、オレの方に駆け寄ってきて、オレの頬に手を這わせる。手の感触に体が震えた。つーか、いつの間に眼鏡とったんだ、コイツ。



「今日はイイモノ、持ってきたの。」



後で使ってあげるね。そう言って知歳は、片方の手でオレの頬を、もう片方の手でオレの鎖骨あたりをなぞりながら、唇を寄せて俺にキスをしてきた。ついばむ感じのバードキスから、次第と唇が開き、知歳の舌が俺のそれに絡んでくる。くちゅくちゅといった水音が鼓膜に伝わってきて、背筋がゾクゾクする。不意に首筋を這っていた知歳の白い手が、オレの体を滑り落ちていって、その感覚に脳ミソが溶けていきそうだった。



「怜恩くん、かーわいい。」



ちゅっ、と唇が離れた瞬間に耳元で言われた一言で、オレは完全に理性を失くしていた。



「知歳っ、知歳っ」



「どうしたの?怜恩くん」



「お、オレ、苦しいっ、」



「んー?どこがどう苦しいか、ちゃーんと言ってくれないと、私わかんないなぁ?」



「オレ、ズボンの中…チンコ、苦しい…っ!たすけてっ、こないだみたいに、して、知歳っ」



「よく言えました。怜恩くんは、偉いねー」



そう言って知歳は、オレのズボンのベルトに手を掛けて、カチャカチャと外していく。その時間さえもどかしくて、オレは何度も知歳、知歳、と知歳の名前を呼び続けた。
知歳がズボンを下ろして、オレのチンコをなぞるように触ってから、竿を扱いていく。たまに睾丸を揉まれて、オレは為すすべもなく喘ぐ。



「ひぃンっ、ふぅあああああッ!んあぁ…ッ…!知歳ッ、知歳ッ!」


「怜恩くん、我慢汁が溢れてきてるね。もうそろそろ射精しちゃうかな?」


「あっ、ふぅんっ!んううぅっ!…んぁっ、も、イく…っ!」


「じゃあ、一回射精しちゃおっか」



知歳が手の動きを早めて、オレは絶頂に飲み込まれるみたいに、頭ん中が真っ白になって、それで、


「ふぅん、あっ、あっ……!っんあああああぁぁッッ!!」



オレは知歳の手の中に精液をぶちまけた。



「ふ、ぅん……はぁ…っ」



「……あーあ、私の手、怜恩くんの精液まみれだぁ。…………怜恩くん、」



精液にまみれた手をオレの前に持ってきて、



「これ、舐めとってキレイにして?」



自分が出したものなんだから、自分でキレイにしなきゃ。できるでしょ?と言ってきた。



「ぅえっ、や、」



「は・や・く」



顔は笑っているはずなのに、なんか怖い。文字にしたらお願いしてる感じだけど、これ確実に命令口調だし。逆らえないのはオレがドMだからじゃない。断じて。



「……ふっ、んんっ」


床に膝をついて、自分の精液舐めるなんてマジ信じらんねぇ。ぴちゃぴちゃ、ぺろぺろ。まるで犬みてぇで、精液は苦いし、激マズ。なのに、俺の舌は止まらずに知歳の手を舐め続ける。苦くてマズイ精液の下の、知歳の白い手が甘く感じる。知歳の指に舌を絡ませて、唾液で濡らしていく。時折ちゅぅっと吸う。知歳はすっげぇ満足そうに笑う。



「ふぅ…ん、ちゅうっ、はぁ…っ」



「ふふ、もう大丈夫だよ、怜恩くん。」




じゃあ、とっておき、出そうか。そう言って知歳は自分のトートバッグから、コンドームと、ピンク色の何かを取り出した。それは、AVとか、そういう漫画で見たことあるヤツ。



「じゃーん!遠隔ローター!とある筋から入手しました!大丈夫、小さいけどパワフルだし、静音で出来てるから、バレないよ」




知歳は剥き出しになったオレのチンコにガーゼを止めるテープみたいなのでそのローターをくっつけて、その上から、コンドームを被せ始めた。え、それって、まさか。



「ふぁんっ……ちょっ、まっ…!」



「スイッチ、オーン」



いきなり震え始めたそれにオレはビックリしてさっきよりも高い嬌声を上げた。




「あああああああんッッ!?ひゃああああんッ!!!ぅああんッ!」




「あれ、ちょっと強かったかな?」



知歳が手元のリモコンで強度を下げた。オレのチンコに微かだけどダイレクトに快感が伝わってくる。そして知歳は、驚愕の一言をオレに言った。



「じゃあ、その状態で、午後の授業、頑張ってね。怜恩くん?」


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