熱くも寒くもない、ジャバウォック島の深夜。何故かコンコンというノックの音が聞こえ、コテージのドアを開けると……
「フハハハハ、来てやったぞ、みょうじなまえ!」
超高級の厨二病、もとい、超高級の飼育委員である田中眼蛇夢くんだった。私は何故か彼に気に入られている、というか、懐かれている。解せぬ。破壊神暗黒四天王はどうした、お前も寝ろ。
「誰も呼んでないよ……。あと田中くん、今何時か知ってる……?夜中の三時だよ?寝ようよ……」
「まあ、そう言うな。せっかくこの俺様が、この孤独な月が浮かびし漆黒の刻に貴様の為に来てやったのだ。」
「ありがた迷惑にも程があるよ……」
なに純粋な目でこっち見てるの……褒められるとでも思ってたの?
「ここに来たのは他でもない。貴様にこれを返そうと思ったのだ。」
「……?タオル?別に捨てても良かったのに。タオルくらいならスーパーにもいっぱいあるし。」
この修学旅行のルールでは、『ポイ捨てが禁止』なだけであって、ゴミ箱に捨てることが禁止ではなかったはずだ。ていうかそんなルールあったらモノミに腹パンしてるわ。
「生憎、俺は借りたものはきちんと返さねば気が済まないタチでな」
「……あぁ、そうですか」
「では邪魔するぞ」
「ファッ!?」
柔軟剤でもふもふにされたであろうタオルの手触りを確認していると、田中くんがこともあろうにズカズカと入り込んできた。ちょ、やめろ!てゆうか寝ろよ!
「田中くん……寝ようよ……てゆうか私が寝たいんだけど……」
「ふむ……では」
「ちょ!!何故私の布団で寝ようとする!!」
「構わんだろう。今俺様の安寧の揺籠には破壊神暗黒四天王が眠りについている。無闇に起こしては明日の体調に支障が出る。」
私を無闇に起こすのはいいのか、あんたは!!
「五月蝿いぞ、お前の声で輪廻の果てから呼び出された魔術師が目を覚ましたらどうなるか分かっているのか」
「普通に近所迷惑って言ってほしいわ……」
「仕方がない、本来ならば俺のテリトリーには破壊神暗黒四天王のみが侵入を許されているが、貴様には特別に許可してやろう」
「うわ、ちょっ!」
そうして何故か、私は田中くんに腕を引っ張られて布団にダイブし、そのまま朝まで過ごすことになったのである。