Eu基山半田
とある休日の昼下がり。雷門中吹奏楽部の部室の前では、ギコギコとなにやら吹奏楽部らしからぬ音が響いていた。
「……よし、切れた」
「じゃあそれとこれをくっつけよ……」
「何やってるんだっ!!」
四角に切り取られた木材と釘と金槌を手にする基山と半田に、風丸が怒りの意を示す。
「あれ、風丸」
「風丸くんも一緒に作る?」
風丸が怒ったことをあまり気にとめない様子で二人は言った。
二人が手に持っている木材。たぶん、前々からずっと二人で話していたアレのことだ。風丸は痛む頭を押さえて、気が進まないながらも訊いた。
「……何を」
二人はよくぞ訊いてくれましたとばかりに表情をきらきらさせ、それぞれが手に持っている木材を組み合わせて言った。
「『ユーフォ忘れてます』ってプレート!!」
ああやっぱりそうだ、コイツら本当に作る気なのか、と風丸は呆れかえる。
「いつもtuttiで忘れられがちなユーフォだけど、」
「このプレートがあれば!」
「ユーフォにも同じフレーズがあるのに『じゃあここからテナーとトロンボーンで』とか言われた時にすかさずユーフォの存在を主張できる!」
まるで街頭演説のように基山と半田は拳を握り高らかな声で言った。もはや風丸はそんな二人についていくことができない。
「あのさ、お前ら」
風丸はきゃっきゃっと騒いでいる二人に言った。
「近所の人から苦情来てるけど、先生とかいろんな人が協力してくれてるから吹部として活動することができてるって忘れないでくれよな、っていうか、頼むから日曜大工なんかこんなところでやらないでくれ……!!」
苦情処理は全部副部長の仕事なんだぞ、と風丸の有無を言わせない口調に、二人はただこくこくと頷くことしかできなかった。
言い分は分かるけど
今でも、部室横のちょっとしたスペースに作りかけのプレートが放置されているのは知る人ぞ知る話。
2011.3.28 修正
2016.2.12 修正