その輝きを、一度だって手にしたことがあったろうか。まるで好きなものを見つけた時の子どもの目のように、きらきらが溢れ続けるその瞳の輝きを。

 不思議なことに全く飽きないもので、じい、と見つめていると、熱斗が「なんだよ」と言ってきたから、炎山は人差し指を持ち上げて、熱斗の目の前で動かした。すると熱斗の目はそれを追って動く。それが面白くて思わず笑みを零すと、熱斗はまた「なんだよ」と言った。
「いや、何でもない。気にするな」
 熱斗は炎山が笑ったのが何となく気に食わなかったのか、「ならいいけどさー」と言って頭の後ろで手を組んで、ついでに足まで組んで地面に寝転がってしまった。炎山は熱斗も見ているであろう空に目を向けた。
 空を優雅に泳ぐ雲の流れが少し速い。恐らく、上空の風が強いのだろう。地上にも吹いた爽やかな風は、草木や花や炎山たちの髪や服を穏やかに揺らした。どこから運ばれてきたのだろうか、優しい香りが炎山の鼻をくすぐった。炎山はまた一人笑いそうになって、どうにもむずがゆくなって、熱斗に話しかけた。
「光、ネットバトルしないか」
 炎山の言葉に、熱斗はがばっと勢いよく効果音をつけて起き上がった。
「えっ、マジで? いいの?」
 ああ、その輝きだ。その瞳に潜む、熱斗自身は決して見ることのできない輝き。蝋燭のように温かくて、真夏の太陽のように眩しくて、宇宙の最奥に在る星のように誠実な。
「……光、今はロックマンもブルースも調整中だろう?」
 呆れたように炎山は言った。そして思った。惜しいことをしたな、と。こんなに純粋な輝きを持つ瞳を騙すなんて。案の定、熱斗は一度はっとして、「じゃあそんなこと言うなよ」とまたふてくされて寝転がってしまった。相変わらず、一抹の感情に振り回されやすいヤツだ。
 炎山は右手を熱斗の頭に置いて、髪の毛をわしゃわしゃとしてやった。するとまた熱斗はがばっと起き上がるから、炎山はてっきりまた怒られるものとばかり思っていたが、予想に反して、熱斗は笑っていた。
 ああ、そうだよ、その輝きを。
 夜空に尾を引く流星のように、この手の中に留めておくことはできないけれど、いつまでも俺に魅せていて欲しい。そう願う炎山の瞳にも小宇宙が瞬いていたことを、炎山はまだ知らない。


いつか見た流れ星で射抜いてあげる


2011.4.12
2019.3.11 修正


- ナノ -