「はあっ!!」
敵の体の中心を右手のソードで貫き、思いっきり引き抜く。すると大声で悲鳴をあげ、彼は現実世界からログアウトした。それと同時に、上空のディメンショナルエリアが乖離を始める。私もクロスフュージョンを解いて、ある人の元に駆け寄る。
「炎山!大丈夫!?」
何とか敵は倒すことができたが、私の大切な人は守ることができなかった。
私たちはネット警察から、デンサンシティに敵が現れたと連絡を受け、クロスフュージョンをしてその敵と戦っていた。
私は戦闘中、あろうことか背後に一瞬のスキを作ってしまい、それを狙った敵の攻撃を防ぐために炎山が犠牲になってしまったのだ。急いで病院に搬送してもらうが、私の心の中は情けなさと申し訳なさと悲しさでいっぱいだった。
炎山が手術室に入っている間も、ずっと椅子に座り両手を目の前で組んでいた。たった一瞬だったとはいえ、本当に迂闊だった。大切な人一人守れないなんて、ましてこんな大きな傷を負わせてしまうなんて、私にはネットセイバーである資格などない。
やがて炎山が手術室から出てくると、私は炎山が乗っている担送車に駆け寄った。
「炎山!」
そして炎山に掛けられている白い布から出ていた炎山の手を握る。
「ああ……お前か……」
炎山が虚ろな目で私を捉えると、突然涙が溢れ出てきた。
「ごめん、ごめんね……」
炎山の痛々しい姿を見て、ただ泣きじゃくることしかできなかった。炎山はそんな私を見て、呆れたように
「お前は何か悪いことをしたのか」
と聞いてきた。
「悪いことって……だって、炎山がこんなになったの」
私のせいだし、と続けようと思ったが、また涙が込み上げてきて言えなかった。すると炎山は、大怪我をしているにもかかわらず、いつものようにふっと笑った。
「それでも、お前はちゃんとトドメをさせたんだろう?」
「そ、そうだけど……」
「だったら、俺がいなくても大丈夫だ」
これからも戦ってくれるな? と炎山は私に聞いた。
「いや、嫌だよ、もう…」
泣き続ける私の頭を黙って撫でる炎山の手は優しかった。
企画「レゾナンス」様に提出
2011.3.28 修正
2019.3.11 修正