「うわああああ!!」
 大量の機体が敵味方関係なく入り乱れる激しい戦闘の最中、突如仲間の悲鳴がコントロールポッドの中に響いた。
「大丈夫か!」
 ハルキはすぐに通信を開く。しかし、仲間の声が入らないほど追い詰められているのか、返事がない。代わりにクラフトキャリアからの声が届く。
「ハルキ、大変だ! 第一小隊の機体が一つ、角に追い込まれてる!」
「敵の数は?」
「三体で取り囲んでる!」
 三対一、それに自分の声が届かないほどの危機に瀕しているとなると、かなり厳しい状況だ。思わず最悪の状況が頭に浮かんで、背筋が冷える。心が逸る。もうあんな思いは御免だと、もうずっと心に刻んでいる。
「分かった、今すぐ向かう。俺が行くまで持ちこたえられそうか?」
「うん……なんとか」
「こちら出雲ハルキ。救出に向かう。他の小隊は各自持ち場を離れず、できるだけ敵機を押し留めること!」
「了解!」
 各小隊からの返事を得ると同時に、ハルキは機体を飛ばす。向かう先から、ほぼ一方的と言っていい戦闘の音が聞こえる。
 俺が行くまで、なんとかもってくれ――いつ終わると知れない、長く厳しい戦い。この戦いを勝ち抜いていくためには、一人たりとも戦力を欠いてはならない。
 いや、それ以上に、仲間を失うことが今のハルキにとって何よりも辛いことだった。単なる戦力としての話ではない。こうした息のつけない戦いの中で唯一無二の、ハルキに心の安息をくれる、お互い支え合って前を向いて歩いてゆける、大切な存在だからだ。
 待っていてくれ、今すぐ行く……! 滴り落ちる汗。浅い呼吸。早鐘を打つ心臓。ハルキは僅かに震える手でレバーを握り直した。


戦慄く体に鞭打って





もう何年も前になるかと思いますが #文字書き版嫁の表情 というタグが画像付きでツイッターのタイムラインに流れてきたときに書いたものです。(このお話はそのうちの一つの「焦る」というお題です。)
未送信メールの中から発掘されたので手違いで消してしまったりしないうちに上げておきます。


2019.6.23


- ナノ -