ここ最近のハルキの食事を見ていて気付いたことがある。
 まず、食べている物の栄養バランスがかなり良いだろうということ。
 トメさんが気を遣ってくれている寮での食事はもちろんだ。学園での食事も、神威大門の食堂には、惣菜パンやおにぎりなどの軽食、カレーやラーメンなどのガッツリ系一品もの、その外定食ものなんかがあって、生徒自身が食べたいものを自由に選んで食べられるようになっている。そんな中ハルキはどうしているかというと、実は食堂には小分けになったおかずを好きなように組み合わせられるコーナーも設けられていて、そこから何点か彩りよく選んできているというわけである。
 さらに、一口一口、よく噛んで食べているということ。
 お昼の時間にウォータイムの作戦を話し合わなければならず、食事の時間が少なくなってしまうことがしばしばある。でも、そんなときでもハルキは食べ急ぐようなことはしない。一度に口に入れる量もそんなに多くないから、午後の授業に間に合わないんじゃないかと思うこともあるけれど、さすがのハルキだから、そんな失態をおかすことはない。
 これはあくまでそんなハルキを傍で見ている僕の推測なんだけれど、いつも苦労の絶えないハルキがなんとか編み出した、なるべく胃とか内臓に負担をかけさせないための食事法なんじゃないかなと思っている。
 小隊やクラスがだんだんまとまってきたことも大きいだろうけど、このスタイルの食事を始めて少し経ってから、ハルキの顔色や表情があの頃と比べてかなり良くなったような気がするんだ。

 そんなある日のこと。いつものように僕たち第一小隊は一緒にお昼を食べようとしていた。
 ただ、急遽入ったウォータイムのミッションの作戦会議のおかげで、普段よりもお昼の時間が少なく、且つ、お腹の空いた状態になっていた。
「あー! やっと昼飯だぜー!」
 そう言って僕の隣に座るや否や、アラタは唐揚げ定食をガツガツと食べ始めた。
「美都先生、いつも突然作戦会議始めるから困るんだよなー……しかもみんなもなかなかいい作戦思いつかないしさー」
「思ったより時間がないな……」
 片手にフィッシュカツサンドを持ったヒカルがやってきて、僕の斜向かいに座り、急いだ様子でそれを胃に収めていく。
 僕も早く食べ終えないとまずいな、と思ってカレーをすくったところに、今日も見事なほど彩りに溢れたおかずを選んできたハルキがやってきて、二人の食事の姿に驚いたように大声を上げた。
「アラタ! もっと落ち着いて食べろ! ヒカルもだ! 少なくとも三十回は噛め!」
 あまりに突飛な指摘に目を丸くする二人を他所に、ハルキは手を合わせ「いただきます」と言ってから、丁寧な箸遣いでおかずを口に運んでゆく。
 そのハルキの様を見て、今日もみんなで美味しくお昼を食べられる、そんな当たり前のことを、とても嬉しく思った。


飲み込む前にはよく噛んで


2015.5.28


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