「骸ってさあ、ちょっとは俺のこと、考えたことあんの? 本当、一人で突っ走って空回って、ばっかじゃない」

火照った顔で舌ったらずに暴言を吐き、ビールの金色の缶を、テーブルにたたき付けた。炭酸の黄色い液体が少し飛び散った。

「俺たち、もう二十歳超えて、そろそろ結婚とか、考える歳でさ……いつまで男二人で暮らせると思う? もう夢も見れないっていうかア、そろそろ別れたほうがいいよ。うん、俺はそう思う」

沢田は、酒が苦手だ。そのくせに、酒に逃げたがる。酒を飲んだら饒舌になるのも、そうでもしない限り彼は本音を話せないからだ。

「あ〜あ。大人って、やだね」

そう言った彼は、わずかな笑みを湛えていた。自嘲に混じって垣間見えるのは、決して暗く淀んだものではない。

彼が酒を飲む理由はもう一つある。
主張したいのだ。酒が飲める大人だと。行動を選択できる大人だと。