せっかくの夏休みなので綱吉が乙女で悶々で爆発 「綱吉くん、カラオケに行きましょう!」 夏なのになんで海でも山でもなくカラオケなのかはたいへん疑問だったが、骸がやけに楽しそうだったので、ついつい頷いてしまった。 「いいよ、行こう」 それから骸がどんな歌を歌うのか気になったし。やっぱり―― 「サンバ歌う?」 「歌いません」 「あ、そう」 でも、海も名残惜しいので、カラオケが終わったら誘おうと思う。せっかくの夏休みなんだから、遊んだもん勝ちだ。 個室の電話を使って、フロントのおねえさんに注文をする骸。フライドポテトとロシアンタコ焼き、中身はわさびじゃなくてチョコにしてください、あとジンジャーエール2つ。 なんだか慣れてる? ちょっと前まで牢屋生活だったろうに。不思議な人である。 正面に座る彼を上目で盗み見ると、視線は俺の方に向いていて、ばっちり目が合っちゃうわけで。 「なんですか。僕を見たいならもっと近くでどうぞ」 「そっ、そんなんじゃないよ!」 確かにちょっと見たかったのは確かだけど、個室で他に見るものないし、一緒にいるのに目を逸らすって――シツレイだからだ! 悶々としたものに耐え切れなくなって、鼻で嘆息をついた。骸って、たまに空気読めないっていうか、あえて気を遣わないっていうか、とにかく心臓に悪い人だ。仮にも好きな人を、まじまじと見つめろだって? そんなの、恥ずかしすぎて死ねるだろ。 「ほら、歌うぞ。最初は一緒にデュエットしよう」 「そうですね。じゃあライオンで。綱吉くんからね」 「俺がランカちゃんなの? 別にいいけど。お前がシェリル〜?」 「違います。僕はアルトくんになりたいんです。襲いますよ?」 「要らんし脈絡ないぞ」 いちいちそういうヘンタイな思考回路に持って行くのが骸の残念なところだ。そこを直したらもっと――……なんてことはないけど! (とにかく、今日は楽しむぞ!) あ、これってデートなのかな。って今、気づいた。 歌い終わって運び込まれたジュースに口を付けた。骸が本気で歌うもんだからつい俺もハジけてしまった。喉がからからだ。 「つーか、骸、前より上手くなった? サクラなんとかのときより」 「そりゃあ練習しましたもん。それなのにアニメ終了とかふざけてますよ、許せません」 「そっか……。俺、練習なんて考えもしなかった。偉いな〜」 「じゃあ綱吉くんも練習します? そうですね、高音がいっぱい出てくる曲を」 「そうそう、高音苦手なんだよ! やっぱり男だし」 「炉心融解なんてどうですか」 「はあ?! 無理だろ絶対!! 高すぎるわ!」 「そうですか? 君の喘ぎ声の練習になると思いま」 「だからヘンタイ発言は慎めよッ!?」 「クハハハ!」 骸は、ニコニコケラケラと本当に楽しそうに笑っている。一応、楽しんでくれている――んだろう。どっちかというと、カラオケというより俺で遊んでるような気もするけど。 でも、カラオケでよかったかもしれない。海だといろんな人の中でも骸は目立ってしまうだろうから。骸は、俺といればいいのに……、って、何考えてんだよ俺! 「ね、綱吉くん。何事にもスリルって、必要ですよね」 「ああ!」 「じゃあこれから、75点未満だったらフライドポテトを口移しですから」 「へっ?」 カラオケにスリル要らん!! とは今更言っても聞いてくれない。頭が沸いててまったく話を聞いてなかっただけなのに。骸がやけに上機嫌なのが悔しい。やっぱり俺、遊ばれてる。 しかも内容がかなり骸の趣味に偏っているのは気のせいなはずない。口移し? 俺から? 「そんなんっ、損するの俺だけじゃっ――!」 俺の叫びも虚しく、イントロが流れはじめた。今更ながら、なんで骸がカラオケを選んだのか分かった。こいつ、密室でとことん俺をいじめるつもりだ! ああ、やっぱり海に行けばよかった! 2011.8.12. 他にも、延々と骸が恋愛バラードを歌いつづけるとか綱吉にサンバ歌わせて羞恥ぷれいとかあったけど時間切れ…。 因みに最後、綱吉に歌ってもらう曲は「ハ/ッ/ピ/ー/サ/マ/ー/ウ/エ/デ/ィ/ン/グ」かなあと。彼氏の前でこれを歌うのは羞恥ぷれいになると思いまs(`・ω・´)b |