真っ暗な部屋の片隅で、カーテンも開けないで、壁に持たれて座り込んだ。畳んだ携帯を静かに床に置く。リボーンからの電話を切った所だった。
骸が潜入先で死んだらしい。詳しくは聞かなかった。彼がどういう経緯で死んでしまったのかなんて興味も無かった。
俺が二十歳になったこの日から彼のアパートに一緒に住む約束だったのに、彼が帰ってこないから、そんなことだろうとは思っていたけれど――
十五歳の誕生日に貰った時計は、今は骸のベッドに置かれている。今日から目覚まし時計で、自力で起きなければいけない。
とてつもない虚無感に襲われて立ち上がる気にもなれず、逃げる意味で目を伏せた。




目を開けると、いつの間にかカーテンが開かれ、眩しい光が差し込んでいた。――骸がいる。

「まさか、こんなに簡単に彼の私物が手に入るとはね」

悪人のような台詞を無邪気な笑顔で言ってのけた。俺の物だった目覚まし時計を両手で大切に抱えている。目頭が熱くなった。すぐ目の前にいる人はまるで骸そのものだった。

「お前はいつも綱吉くんを起こしてたんですか? 羨ましい限りだ。彼の寝顔も見てたんでしょう」

違うよ、それは今まで机の引き出しで眠ってたんだ、1回しか使って無いし、鳴りもしなかったんだよ、と声をかけようとしたけれど、骸には届かない。

「でも、まあ、綱吉くんが見てるような暢気な夢を見せてくださいね」

瞬間、あまりの眩しさに世界が真っ白に変わった。もしかしなくてもこの世界は――

「君の世界を教えてください、綱吉くん」

――骸の記憶の中に違いなかった。声は出ないのに、引き攣った喉で、俺は骸の名を叫んだ。




目を開けたとき、部屋は薄明るい光に覆われていた。
携帯を開くと、午前六時。朝だ。
腫れた目を擦りながら呟いた声は、思いの外清々しいものだった。

「一人で起きられるよ、俺だって」

ベッドに転がっている目覚まし時計が精一杯の声を張り上げて、俺を呼んでいる。