自力で起きるというのは想像より辛かった。

沢田綱吉といる時間を増やしたいという理由で、仲間のもとを離れて一人暮らしを始めた。
恋人と言って良いのか彼の承諾は得ていないが、出会って四年、いろんなことがあった。
共闘して復讐者から脱出したり、顔を合わせては喧嘩をしたり、殴り合ったり、キスしたり。
この関係に名前を付けるのはとても難しいように思えた。だが恋人が一番しっくりくるのである。

沢田綱吉は十八歳という仮面を被ったお子様だった。
一人で起きられない。アラームが聴けない。寝相が驚くほど悪い。僕もなかなか朝に弱いが、目覚まし時計をセットして起きられないことはない。
彼が僕のアパートに遊びに来て、泊まることになったときは、僕は嬉しいのと同時にげんなりもする。翌朝に彼を叩き起こすことを考えたときだけ、引っ越しを後悔したくなるのだ。

その日も彼が遊びに来て、当然のように泊まることになり、狭いベッドで身を寄せ合って眠った。
翌日、太陽の光りの眩しさで僕が目覚めると、時計は真昼を示していた。こんなに寝過ごすなんて初めてのことで、愕然とした。
隣では彼が未だにすやすやと眠っている。ベッドから突き落としてやろうかと思えた。――突き落とした。

「ひどっ、酷い! 目覚ましで起きられるって言ったのは骸じゃん!うわーん、大学遅刻だよー!」
「今まで起きられなかったことなんてありませんでした。昨日までちゃんと働いていましたこれは。君のいびきが煩いからちゃんと聴こえなかったんです、きっと」
「そんなわけあるか! 本当に動いてんのそれ……って。おい、これどこで買った?」
「時計ですか? 貰い物ですよ」
「お前が買ったんじゃないのか?」
「ええ。何か?」
「いや……別に」

彼は神妙な面持ちで時計を見つめる。

「俺が使うと鳴らなくなるんだな」
「単に君が聴いてないだけでしょ」

じろりと半眼で僕を睨んだ。思わずくすくすと笑ってしまう。

「別に、目覚ましなんてなくても、僕が起こしてあげますから。君には目覚ましなんて要りませんよ」
「今日、寝坊したやつがよく言うよ」
「そうですね……今日は夢見が良かったんです。そう、春の草原でひなたぼっこする夢でした」