目が覚めると、もう昼が近かった。締め切りが明日までの超重要契約書を無くしてしまい、徹夜で探していたのだが、結局見付からなかった。
ボスに正式に就任するまであと一日。二十五歳を翌日に控えた大の大人だというのに、要領の悪さは昔から変わらない。
いつになったら結婚するんだだの愛人は五人作れだの孫は何人欲しいだの――周囲の小言にも大分慣れた。

(それにしても……困ったな)

「逃げる、土下座、リボーン。さあどうする俺」

中指、薬指、小指を立てて思案するも、最後に残ったのは小指だった。リボーンに正直に話すしかない。絶対に怒られるが。

「……無くしたんだから探せばある。探せばあるさ、そうだよねリボーン…」

リボーンの名言――「無くし物は無くした場所にある。だから探せ」――を呟きながら、書類タワーと化したデスクに向き合った。どうせ怒られるならやるしかない。



トントン。背中を突かれた。
ぱっと振り向くと、顔面に一枚の紙が差し出される。それはまさに俺が探しているだった。礼を言おうと思ったが、紙を顔から離したときには、もう誰もいなかった。

カーテンが揺れる。窓が開いていた。
目を点にしたのは一瞬で、懐かしさに目を細めた。

「俺の勝ちだな」

秋風が髪を扇いだ。まるで頭を撫でられているようで、おとなしく目を伏せた。