「いらっしゃいませ」

昼、いつものレストランに新しい従業員が増えていた。緊張のせいか、はたまた俺の顔は怖いせいなのか、震えたか細い声が空いている店の中に響いた。

深夜、人通りの少ない道を選びながら目的地に向かう。あー、今夜もまた嫌な仕事が始まる。

翌日、レストランにはあの新人がいた。

「いらっしゃいませ」

昨日よりも力強い声だった。だが、少し怯えた様子だったのは昨日と変わらないが。どうも、と言ってから奥の席に着く。どうぞ、お冷を差し出す新人に会釈しメニューに目を通す。

「あの、調子悪かったりしますか?」

顔を上げるとこちらを覗き込む新人がいた。

「大丈夫だ」

一言言えば新人はひどく安堵したようで満面の笑みでこう言った。

「そうですか、良かった」

良かった?何故見ず知らずの店員が……
そう思った時には店員の姿はなかった。


それから、しばらくして。
俺の仲間が2人、ボスに殺された。
ボスは俺達を裏切った、裏切ったのだ。

あの店には行かなくなった。
あの新人は元気でやっているのだろうか。

ボスを暗殺したあと、またあいつの成長ぶりを見に行くのもいいかもしれない。




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