「あ」
ボタリ。
アイスがコーンの上から落ちた。
しかも手を伝って。
私の大好きなストロベリーチーズケーキ風アイスが。
「承太郎、学ラン貸して」
「………」
私のすぐ隣を歩いていた承太郎が距離を開けた。あからさまに嫌がっている。
ベタベタになった手をどうしようかと思い、近くに公園があった事を思い出す。
「承太郎、公園に行こう」
「ああ」
承太郎、私の事なんて放っておけばいいの。
承太郎は優しい奴だ。悪く言えば親しい人に異様に甘い。客観的に見て、もっと厳しくしてもいいと思った。
子供達で賑わう公園。
場違いな高校生が二人。
承太郎の眉間にシワが寄ってた。
「おい、これ使え」
手を洗っていると承太郎が何かを差し出してきた。
「ありがとう」
白いハンカチだ。
私なんてハンカチ持ち歩かないぞ。女より女らしいなんて許さん。
「承太郎、暑いし早く帰ろう」
「お前が遅いんだろ」
「承太郎が茹蛸になる前に帰るぞー」
「…やれやれだぜ」
隣に並ぶと昔とは違うんだと痛感させられる。見た目なんて男そのものだ。幼い頃の可愛い承太郎はどこにいったの。私も私で変わってしまったので人の事は言えないけれども。
「ただいま」
「お邪魔しまーす」
珍しく聖子さんがいなかった。買い物だろうか。承太郎がズカズカと進んでいくので私も後をついていく。早速冷蔵庫を漁る承太郎。外、暑かったしなー。
「なまえ、おらよ」
「アイスだ!!」
「ストロベリーチーズケーキでいいんだろ?」
「うん!ありがとう!」
「ん」
どうやら承太郎は自分の飲み物より先に私のアイス探してくれたらしい。お礼を言えば承太郎は満足げに微笑んだ。それから麦茶を取り出し、私に差し出す。
改めて思った。
承太郎は甘い奴だ。