「君はこんな曲を聴くのか」
「君は甘い物が好きか」
「この色が好きなのか」
たまに夢を見る。
ハットを被った男性が私に語りかけてくるのだ。
私はただただ頷くだけ。
彼は満足げに「そうか」と頷く。
それだけの夢だ。
「君はあの男性が好きなのか」
いつものように夢を見た。
夢の中の彼の目線の先には私の会社の先輩。
私は頷く。
私は先輩が好きだ。
仕事をしている姿や優しく接してくれる所が好きだ。
夢の中の彼はいつも通り「そうか」と言った。
彼の顔はいつものような満足げな表情ではなかった。
翌日、先輩が出社しなかった。
何日も何日も何日も先輩の出社しない日が続いた。
そんな中、街のはずれで爆破事件があったらしい。
私はその事件に関係しているのではないかと思ったが、現場に遺体はなかったそうだ。
「君は私の事をどう思う?」
夢を見た。
いつもは目を合わせない彼がこちらを見つめていた。
私は首を傾げ、言う。
「私は貴方の事をよく知らないわ」
彼は「そうか」と言った。
私は「そうよ」と答えた。
「私はデッドマンズQ。君が現実世界で私の姿を見れればよかったのに」
でも見られたら見られたで私の悪行がバレてしまうな
彼は笑っていた。
ああ、彼が先輩を殺したのか。
ぼやけていく視界の中、彼の笑う姿だけが脳裏に焼き付いた。
その後、彼の夢を見た事は一回もない。