なるほどうさんち事件勃発2!


窓際に置いてある、冷めたコーヒーを。

私が事務所に帰ってきたのは、夕方の遅い時間だった。
曇っていたので、なかなか夕焼けみたいなロマンのある風景ではなかったしむしろ梅雨っぽくて、空気が動きたくないよって居座っている感じの空を、歩いて帰ってきた。
事務所には誰もいなかった。
ただいま、が突き抜けていってしまった。私は少し眉をひそめる。部屋を見渡すと、机に書置きが置いてあるのに気がついた。いわく、オドロキさんは検事局までちょっと資料をとってくるそうだ。でも机には一枚きり。もう一枚、あるべき、音信がない。いつもそうなので、わかってはいるのだけど、こういうときには少しさみしくなる。空気が湿っていて、空は曇っていて、道に伸びる影も元気がなくて。家の空気までもがとどまって、下に積もっていくような。私のただいまと一緒に、部屋が少しずつ何かに埋もれていくような。そんなときに、なあ。パパはいつもと変わらないのに、パパがわざとみぬきのために変えたんじゃないかと思うときがある。困ったなあ、誰もいないって。
…よし。
私は意味もなく一人でガッツポーズをとる。もう一度よし。と言う。今度はびっくりマークを後ろにつけて。大丈夫だ、風はあるし、空気とどまり続けることはない。換気をするべきだ。と思う。それはなかなかにいいアイディアだと自分で相槌を打つ。床に散らかっている物を足でぞんざいによけて、風を入れようと窓に近づいて。

そこに一つのマグカップを見つけた。

窓際、窓の桟に置いてある、青と白のボーダーのマグカップ。少々使い古した感が見える、くすみかけた色。中身は冷めたコーヒーが三分の一。少し色が穏やかなのでミルクを入れていると見た。どこをとっても、パパのものだった。
私は窓の桟に置いてあるコーヒーを眺めて、手に取って、微笑んだ。まだ温いコーヒーが手の中で揺らぐ感覚。そして、廊下の奥ががたん、と言った。
「パパ!」
「…みぬき、パパは今アレ。お腹痛いから、アレ。」
「いいよ。…ありがとうね!パパ!」
「……うん。」


_______

6/15なるみぬの日。
大遅刻…!
なるみぬっていうかなる←みぬ!
ちょろっと文ですが、窓際のコーヒーを共有する。っていうコンセプトでしたー。

二日目のコーヒーへ。

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