突拍子もなく言われた。
「グリーンってさ、点、つけるよね最後に」
何て、と書類から顔を上げて語尾も上げて問えば、自覚ないの、と怪訝そうな顔をされた。それはむしろ俺がしたいというものだ。期限に追われる書類を片付けながらだから余計に話の筋が良く分からない。突発的過ぎて推測がし辛い。頼むからちょっと話題をそっちに向けるとか、とにかく導入部分をくれ。算数の文章題だって最初にリード文があるだろう。むしろ只の計算問題にだって、この計算をしましょうみたいな文が一行あるんだ。まあ頼むと言っても嫌と言われるだけだろうけど。そんな本人に言えない文句を肘をついて思っていると、いきなりレッドが顔を近づけてきた。
「うわ、あ」
「ほらこれ、」
…なんですって?彼が指したのは俺じゃなくて俺の肘の下にある書類。指は俺がそれに殴り書き程度にメモした単語の最後を指していた。それは何だろう、何て言えば良いんだろう、良く学校の先生とかが一文書いた後に終止符付けるみたいに打つ、ピリオドみたいな感じの。多分意味は無い。それが彼には珍しいらしい。良く分からないが。ていうかこれ、毎回俺この点付けてんの、と問えば間髪入れずにうん、と返ってきた。まっさかー、と右手をひらひらさせると、じゃあ見てみなよ、と意外と挑戦的な態度。なんだかやけ自信に満ちたその言い分が癪に障った。
「じゃあいいよ、この点他のとこにもついてたら何か奢ってやんよ!」
「…可哀想に」
この文を書いたのは俺で、この点を書いたのも俺で、俺は十何年も俺をやってきてる。幼なじみとはいえ、他人様にそんなことが分かるはずはない。書類を掻き分けてメモをとった紙を5枚程机に並べてみる。目を皿のようにして点の有無を探す俺の傍らで、腕組みをして大層余裕ぶっこいてる幼なじみ。そして、俺は行の末尾をしたたか見て。

ピカチュウの分布.
(これは夢か…?)(じゃあ、三食奢りで、)(はあぁ!?)

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実はグリーンのちっちゃいクセを良く知ってるレッドさんだよ、という話。
2010.03.29

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