「サカキの服、喪服みたい」
「…喪服を好んで着るような趣味はないが」

不意に隣に座っているレッドが、私を見て言った。つい先程までバトルに全神経を集中させていた目で、彼は私を覗くように見る。私が好きな、戦況を解する彼の目が真っ直ぐに私を捉えているのを感じて、私は誤魔化すように咳払いを一つ。それから、苦笑を交えて返事をする。
「…なぜそう思った、」
私のスーツは決して喪服ではないし今日のネクタイの色も黒ではない。最近の若者はこんな表現を普通にするものなのだろうか。もしそうだとしたらジェネレーションギャップ、というヤツだろうか。何にしろ私には想像もつかなかった。最近の若者の彼は、少し目を伏せて思考にふけった後、恨みがましそうな視線をこちらに投げかける。そしてその後、勘念したように言った。
「…よく、分かんない、」
「は、」
「…けど、…大丈夫?」
ぽかん、と彼を見つめて私は変な顔をしていただろう。心配された?…レッドに?私が何か悩みでも抱えきれていないように見えたのだろうか、しかも彼に。まさか。硬直した私に彼は更に続ける。
「なんか、つらそう、だな、って。」
と眉を潜めたりまばたきしたりしながら彼は私を見上げた。彼自身も確実でない言葉なのが伝わって、自信に満ちて指示を出すをあの鋭い横顔を持つ彼にも、こんな一面があるのだということを知った。その無防備さに言いようがなく何か、衝動が体を駆け抜けて。気づいたら、彼を腕の中に納めていた。いたい、と呻かれたが気にしない。
「しばらくこうしていて良いだろうか、」
「…聞かなくていいよ」
疲れていて喪に服すみたいに気を張っているばかりに見えたのだろうか。やはり彼は捉えきれない。最近の若者であるのに加えて、更に。何か違うようだ。触れられない神秘、まるで。
「それならお前は献花、だな」
「…なにそれ、」
「いつか分かる、だろう」


黒い服と清い花束
(静謐の空気の似合う人達)


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これも昔から暖めていた榊赤ネタ。
なんとなく似合うなあと思ったのですが予想以上にしんみりしてしまったなあ、でも好きだ、榊赤。

2010.08.11
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