ガラススタンド.2


では、一体…何に?この部屋に入ってきたことが、彼のこの表情を誘発したのだろうか。いや、というよりは、むしろ。
「…コレですか、」
「そうだよ、」
「コレを捨ててはいけない、と。」
「そうだよ、」
とはいってもそれは透明なガラス片。少しヒビが入ったりしているもので。お世辞にも綺麗じゃない。
「変な顔してるね」
「そりゃあ、意味が分かりませんから」
「…そうか、知らないのかオドロキくんは」
「え、」
何だその、知ってるの当然じゃないみたいなタイド。…そんなことを言われても、分からないものは分からないんだけど。そう言うと成歩堂さんは少し考えた顔をして、それからふわりと笑った。思わず眉を寄せてしまった。そんな笑い方似合わない、似合わないけれど、

「発想を逆転させるんだよ、オドロキくん」

その声に我知らず頷いてしまう。ご丁寧に逆転、と復唱したりしてしまう。しかもその所作に嬉しそうに頷く成歩堂さんを見て、続きを要求してみたりしてしまう。どうしたオレ。
「ぼくとこいつ、電気スタンドの関係性を証明することができないなら、ぼくとこいつに共通して関係する何かを立証するんだよ。」
「…コレ、元は電気スタンドだったんですか、」
「そうだよ、全部ガラスでできてたらしい。」

…らしい?

「でも、電気スタンドは、何かの拍子に割れてしまった」
「…何かの拍子に、ね」
「でも成歩堂さんはそれを捨てなかった。」
「…そうだね、」
「捨てるのを忘れたのではなく、」
「うん。捨てたくなかったんだ。」
…頭がこんがらがってきた。オレにこんなことが立証できるのか。『電気スタンドと成歩堂さんに共通して関係する何か』のことなんて。何か、というのが出来事なのか、人物なのか、物なのか。そこから分からないというのに。というか、そのガラスにそんな意味なんかあるのか。また成歩堂さんの気まぐれな思いつきじゃないのか、そういえばなんでまたこんなにも踊らされているんだオレは。
「分かりませんよ、そんなの。」
あなたの考えることなんて分からない。7年前に死んでしまってからすっかり様相を変えたあなたなんかを、オレが分かるはずもない。
「…そうかい、」
とりあえず、コレは捨てちゃいけないんでしょう、分かりました、捨てません。それで良いでしょう?早口でまくし立ててガラス片を入れていたビニールを括り直して元の棚に戻した。
「…今は分からなくていいよ、でもね」
わすれないで。微笑みか本気か分からない顔で成歩堂さんはオレを見て言った。何を混ぜたらこんな表情に、声音に、なるんだろう。とりあえずハイと返事をすることしか、出来なかった。


(逆転を受け継ぐ)


_______

いつの間にか長くなってしまった事務所での話。
こんなふうに受け継がれる逆転してて欲しいなぁ、と思って。
共通して関係する何か、は言わずもがな彼女です、ね、1やらなきゃ分からないネタでスイマセン…!

2010.06.04


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