2011.10.04 お久しぶりです。まさか、俺がこんなに甘い声が出せるなんてもう、思ってもいなかった。 「調子、どう」 その言葉で始まる通話はびっくりするほど穏やかで、和やかだ。最初は、どうすればいいか分からなくて電話を耳元に当てながら相槌くらいしか打てなかったが、やっと最近、好きの表し方がわかってきたように思う。電話越しくらいでしか会えない忙しい愛しい人。どうにかして気持ちを伝えて繋ぎ留めておきたいのに、恥ずかしさが邪魔をする。息を言葉の形に整えて、あとは吐き出すだけなのに、どうしても、うまくいかない。促されるように、幼児に喃語で返事をするように語尾を上げて彼は間を繋いでくれるが、その響きすら妙に愛しいのだ。好い声だよなあ、と頭の隅で思う。 「お手本見せようか」 「え。」 「…好き」 頭が隅から焦げていく。内臓がまとめて収縮した。口を引き結んでいないと変なため息すら出そうになる。それより口角が緩んで表情を維持するのがとても辛い。もう、と思う。でも嬉しい、と感じる。この気持ち、検事にも分かって貰えたら、いいのに。 「おデコくん、お手本見せたよ」 「う」 「君は?」 「……」 「ん?」 「……」 そりゃあ彼は何でもできて、愛を伝えるなんて日常茶飯事で、だけど俺はそうではない。でも、俺だって、アナタを好きだ、それは行動で表せれば好いのだけど余りに会えないものだから、それもできなくてだから凄くもどかしくて、俺は、恥ずかしいのと伝えたいのを天秤にかけて。 「牙琉検事、」 「ん。どうしたの」 「……好き」 ああ、もう頑張って押し出した空気は出したことのないような潤いと低さで、というかうまく言えたかどうかも定かじゃなくて。やっぱり言うんじゃなかった恥ずかしい、と後から後から頭は煮え立って。だけど。 「……うん。ありがとう」 その言葉にどうしようもなく嬉しくなって、やっぱり言ってよかったと、思えた。 響王、で甘、なんて書けちゃったよ私。 まさかまさかの采配で、書いた本人が一番驚いています。でももっと個々人が自律した話を書きたいなーなんて。ハンガーがでて来ようとして詰まった感じなのでちょっと息抜き。 ところで実話です。 comment (0)│ |