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ハロウィン♪ (寺田屋)



お昼も終わって、お茶の時間。
御勝手からみんなのお茶を淹れて、お盆に載せる。
今日はちょっとした企てがあるんだよね♪
まずは、慎ちゃん。

「慎ちゃん」

襖越しに声を掛ける。

「姉さんッスか?どうぞ」

そっと襖を開いて。

「Trick or Treat!」
「?!?!?!」

慎ちゃんが驚いて口をパクパクさせてる。
成功成功♪

「ふふ、驚いた?ハロウィンだよ♪」
「は・・はろういん??!」
「西洋の収穫を祝う行事、さっきの言葉は『お菓子かイタズラか?』っていう遊びなの」

まだ、驚きを隠せない慎ちゃんに、用意していたお茶とお饅頭を差し出す。


「そ・・そうだったんスか、おれ全然知らなくて・・・」

少し申し訳なさそうに言う。
しまった、やりすぎたか?

「そういえば、ちょうど頂き物の飴があるんスけど・・・これでいいっスか?」

そう言って文机からキレイな飴細工を持ってくる。

「わあ、キレイ・・・」
「どうぞ、姉さん」
「え?悪いよ、こんな素敵なもの・・・」

すっと差し出してくれる。
うーん・・・こんな素敵なものが出てくるとは。
お饅頭か煎餅ぐらいのイメージだったんだけど・・・・。

「いえ、初めから姉さんに上げようと思っていたので」

にっこり笑って言う。

「・・・じゃあ、頂きます。ありがとう慎ちゃん!」
「どういたしましてっス!」

あまり遠慮してるのも悪いので、お礼を言って部屋を退散した。

キレイな飴細工をお盆に載せて、次は以蔵の部屋へ。

「以蔵、いる?」

声を掛けてみるけど、返答がない。

「以蔵?」

無音。
寝てるのかも?と様子を伺おうとすると。

「八重さん、以蔵なら使いに出したが?」

と武市さん登場。

「そうですか」
「以蔵になにか用事か?」

まあ、用事といえば用事だけど・・・・。
あとでもいっか。

「いえ、大したことないので。武市さん!」
「なんですか?」
「Trick or Treat!」
「・・・それは?」

うーん、慎ちゃんのような反応は期待してなかったけど。
ちょっと冷静過ぎない?武市さん・・・・・。

「ハロウィンです」
「はろういん?」

慎ちゃんと同様の説明をする。

「なるほど、お菓子を強請る遊びなのですね」
「・・・・・はは」

冷静に納得されると、こっちがこっぱずかしい・・・。

「部屋にきなさい、ちょうどお茶菓子に用意してた団子がある」
「はい♪」

そして、武市さんから餡団子を2本頂いた。
武市さんにはお茶とお饅頭を置いて、部屋から退散。

続いて龍馬さん。

「龍馬さん、いますか?」
「おるぜよ」

返事を確認して襖をあける。

「Trick or Treat!」
「おお!はろういん、じゃな!」

意外な反応に私が面喰う。

「え、龍馬さんハロウィン御存じなのですか?」
「ワシが子供の頃、お世話になっていた家で話を聞いたことがあっての」

意外な子供時代に驚く。
いや、私が不勉強なだけだが・・・。

「じゃあ、今の台詞も・・・?」
「うる覚えじゃが・・・確か菓子をやるんじゃなかったかが?」
「はい、そうです」
「よしよし、ちょうど良い菓子がある」

そういうと箪笥から小さな小箱を取り出す。

「これじゃ」

箱から取りさだれたのは、小さな壺?みたいなもの。
手の平に収まるぐらいの小さな小さな壺を渡してくれる。

「これは・・・?」
「金平糖じゃ」
「金平糖!」

この時代、金平糖はまだまだ貴重品。
それを下さるなんて・・・・!

「この壺は『お振り出し』と言って、茶道の道具じゃ」
「そんな貴重なものを・・・私なんかに」
「八重さんだから持ってて欲しいのじゃ」

優しい眼差しで龍馬さんが言う。

「それに、いつ何時、命を狙われるワシが持っていて、壊れでもしたら、台無しじゃ」
「でも・・・」
「まあ、いいから持っとき!」

笑顔で押し切られてしまった・・・。
お振り出しに入れらてた金平糖。
大事に食べよう。

龍馬さんの部屋を出ると、ちょうど以蔵が戻ってきた。

「おかえり、以蔵!」

最後のターゲット!

「ああ」
「お茶淹れたんだけど、飲まない?」
「先生に報告があるから、それからでいいか?」
「わかった、部屋で待ってるね」

以蔵の部屋で待つと、作程時間もかからず以蔵が戻ってきた。

「待たせた・・・?」
「Trick or Treat!」
「・・・?!」

鳩が豆鉄砲食らう・・・ってこんな顔かな?
それぐらい面白い顔してる。

「なんだ、それは?」
「『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』
っていうハロウィンの遊びだよ!」

「・・・生憎、菓子は持ち合わせていない」

うん、以蔵は持ってないと思ってた。
元々、甘いものもあまり好きじゃないみたいだし。

「じゃあ、イタズラ♪ね!」

そう言うと以蔵の背後に回り、後ろから以蔵に抱きつく。

「お・・・おい!」
「『イタズラするぞ』って言ったでしょ?」

そのまま首筋に唇を寄せて、キツク吸う。

「・・・おい!!」
「・・・・・」
「・・・・」
「・・・・」

そっと離すと、以蔵の首筋に赤い跡が残った。

「イタズラ完了♪でも、以蔵って肌が黒いから余り目立たないな」
「お、お、お前な、目立たないとか・・・!?!」

以蔵が真っ赤になって言う。
ちょっと度が過ぎたかな?

その日の夕餉。

「い、以蔵くん!?」
「以蔵?!」
「以蔵?!」
「私がつけたんです♪」
「あ、馬鹿!お前余計な・・・・?!」
平然と報告。
当然、みんな驚愕。

「だって、以蔵ってお菓子持ってなかったから、イタズラしたんです♪」

「イタズラ・・・?いいなぁ、おれも姉さんにイタズラされていっス」
「これがイタズラ・・・ですか?」
「以蔵だけズルイのう・・・・」

「いや、俺は帰ってきたばかりで・・・・」


このあと、以蔵がみんなに苛められたのは言うまでもない。
<end>
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以蔵が一番イジリやすかっただけな話。



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