QLOOKアクセス解析 小説本文 | ナノ



故意か天然か


見事な五月晴れのデート日和。
そう大騒ぎする八重と臨海公園を歩いていると、
突然の通り雨に襲われた。

「・・・太陽が出てるのに雨が降るなんて」
「・・・通り雨だ、すぐに止むだろう」

木の下で雨宿りをしていると、予想通り雨はすぐに止んだ。

「・・・止んだだろう?」
「止みましたけど、聖司さんびしょぬれですね」
「こんなの大したことじゃない」
「ずぶぬれじゃないですか!風邪ひいたらどうするんですか!」

俺を心配してデートもそこそこに自宅へ戻るハメになった。

家に着くとすぐに風呂に入れられた。

「聖司さん、お部屋で待ってますから、ちゃんと温まってきてくださいね!」
「・・・俺は子供か・・・」

八重はニコニコと機嫌良く言う。
そう言われても、せっかく八重が部屋にいるというのに、のんびりと
風呂に浸かっていられるわけもなく・・・。
シャワーもそこそこに自室へ戻る。

「・・・何してるんだ?」

部屋で目にしたのは、クローゼット盛大に広げて中をのぞく八重。

「アルバムあるかなぁ〜って?」

悪びれもせず飄々と言いのける。

「・・・見てどうするんだ」
「小さい頃の聖司さんって、どんなだったかという興味です」

パタンと開いていたクローゼットを閉めて、ソファに腰掛ける。
俺が溜息とともに八重の隣に腰を下ろす。
すると、じーっと今度は人を凝視する。

「な、なんだよ?」
「お風呂上がり、バスローブじゃないんですね」
「お前な・・・バスローブ姿で廊下を歩いていたら可笑しいだろう」
「確かに!」

アハハッと楽しそうに笑い声を上げて言う。
本当にコイツの思考回路にはついていけない時がある。
でも、それが可愛いと思えるあたり、俺はかなり重症だ。

「で?」
「え、『で?』って?」
「アルバム・・・みたいのか?」
「見せてくれるんですか?」

目をキラキラとさせて、興奮して言う。
何がそんなに楽しいのか、理解ができないが・・・。

「アルバムは寝室だ、待ってろ取ってくる」

ソファから立ちあがり、寝室のドアの前で八重の気配に気がつく。

「寝室だ、お前は入れない」

背後からノコノコとついてくる八重に言う。

「何でですか?聖司さん、絶対寝室に入れてくれませんよね?」
「あ、当たり前だろ!」
「ふーん・・・」

何かを訝しがるような表情をする。
こう言う時は絶対と言っていいほど、見当違いなこと考えている。

「なんかヤマシイものがあるんですね!」

やっぱり、だ。

「なんだよ、ヤマシイものって」
「エッチなDVDとか?」
「あるわけないだろう!!」

眩暈がする。
そんな発想が出てくる割に、男の寝室に入れたがらない理由が
思いつかないあたりが、ボケているというかズレているというか・・・・。

「じゃあ、入れてくださいよ!」
「お前な・・・」

食い下がる八重。
こういうときは頑として、意見を引かない。

「・・・少しだけだぞ」

そして、俺が根負けするんだ。

「はい!」

嬉々として寝室に入る。
俺はさっさと目的のアルバムを手にして、寝室を出ようとするが・・・。

「わあ!やっぱり聖司さんのベッド広ーい!」

能天気な声が聞こえる。
しかも、勝手にベッドに転がっている。

「おい、入っていいと言ったが、寝ていいとは言ってないぞ!」
「聖司さんのベッド気持ちいいですね♪」

アルバムを手にベッドサイドに近づく。

「聞いてるのか?」
「聖司さん、一緒に転がりませんか?」
「な、何を言ってるんだ?!」
「一緒にお昼寝しませんか?なんか眠くなりました」

寝転がったままポンポンと自分の隣を手でたたく。
隣に寝ろというのか?

「あのな・・・ここは公園じゃないんだ」
「知ってます、聖司さんのベッドです」

まるで俺の理性を試すかのような、無邪気な笑顔で言う。

「ああ・・・もう!」

好きな女にベッドに誘われて、戸惑わない男がいたらお目にかかりたい。
アルバムをサイドテーブルに置いて。
ボスっと乱暴に八重の隣に転がる。

「ふふっ♪」

八重のほうへ向きなおると、彼女は満足そうに微笑み、
顔を胸に摺り寄せてくる。

「聖司さんのいい匂いがします」

緊張が全身を支配する。
理性を総動員して、今を堪えていることなど、コイツには
わからないんだろうな。

そう思うと、少し悔しいので。
八重の髪をひと掬いして、口元に持っていき

「八重の髪はいつも甘い匂いがするな」

と言ってみる・・・が。

「そうですか?食べてもいいですよ?」

くすっと小さな笑いとともに、爆弾発言。
埋めていた顔を少し上に向けて言う。
その上目遣いの目は、理性が切れるには十分だった。

片手で八重の顎を持ち上げ、軽くキスをする。
それから啄むようなキスを繰り返すと、八重の目がトロンと
とろけるような表情をしていた。

八重に覆いかぶさるように体制を変える。
彼女に負荷がかからない程度に体重を乗せる。

「・・・聖司さん、暖かい・・・」

ぼんやりとした口調。
細い両手を首に回してきたのを合図にキスを再開する。

が。

予想外の出来事が起きた。

「八重?」
「・・・・・」
「おい・・・」
「・・・すぅ」

あり得るのか?
いやないだろう!
キスの合間に眠りに落ちるなんてことは!!

「八重?」

呼んでも反応はなく、規則正しい呼吸だけ。
本気で寝ている。
この状況で寝れるなんて、どんな神経の持ち主だよ?!

「・・・・ったく!」

柄にもなく大声で叫びだしたい衝動を抑えるように、
八重の隣に転がる。
全く・・・・コイツには振り回されっぱなしだ。
出会ったときから、そうだった。
やることなすこと、本当に何の思惑もなくて・・・。
防戦一方で攻撃に転じた途端、ゲームが終了している。
負けっぱなしだ。

『いつか勝ちにいく』

そう宣言したものの、実際は1勝も出来ていないという
何とも情けない戦歴に、我ながら苦笑するしかない。
それでも・・・。

「いつか、必ず勝ちに行くからな、覚悟しとけよ」

すやすや眠る八重に軽くキスをする。
かすかに嬉しそうに微笑んだのをみて、俺も彼女の隣で
目を閉じた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言い訳・・・・・・・・・・・・・・・・
相変わらず負けっぱなしな聖司さん。
いつか勝てるといいねぇ・・・。



☆目次☆



☆comment?☆







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -