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コーヒータイム (小娘side)


〜小娘side〜

「今日は寒いなあ・・・」

私が薩摩藩邸にやってきて、半年が過ぎた。
暑かった夏から雪でも降りそうに寒い冬に
季節も移り変わっていた。

今は夕餉も終わって暇を持て余しいた。
相変わらず大久保さんは忙しくて、
最近の夕餉は一人が多い。

早目のお風呂を頂いて、部屋の火鉢に当たってた。
私が暮らしていた時代とは違って、暖房器具なんて
ホント、これぐらいしかない。
あとは温石とかいう湯たんぽみたいな石だけ。
昔の人って、すごかったんだ・・・なんて
感心して見たり。

ふと、火鉢の上で湯気を焚く鉄瓶を見ながら
思い出したように、スクバを引き寄せる。
中身は来たときのまま。
まあ、使えないものも多いんだけどね。

そんななから見つけたのが、
インスタントコーヒー!
私はカフェイン中毒っていうのかな?
朝・昼・晩、オヤツも夜食もコーヒーが
ないとダメだったんだよね。

この世界に来てから忙しくって、
すっかり忘れてたけど・・・。
でも、生活に慣れて落ち着いてきて、
久しぶりに飲んでみたくなった。

部屋の隅にある、行李から
真っ白いカップを取り出す。
これは大久保さんが私にくれたもの。
普段はもったいなくて、使えなかった。
でも、今回は使ってみようかな。

「小娘、起きてるか?入るぞ」

ちょうどお湯を注いでいると、大久保さんの声が聞こえた。

「はい、どうぞ」

入るなり、大久保さんが私の手元を凝視してる。

「おかえりなさい、今日は早かったんですね」
「予定が変わってな。ところでそれはなんだ?」

私の正面に座り、コーヒーを見ている。
そうか、きっとしらないよね。

「これはコーヒーです」
「コーヒー?薬か?」
「違います、お茶とかと同じ飲み物ですよ」
「・・・飲めるのか?」

飲めるのか?
え、そんな怪しげなものに見えたのかなあ・・・。
そうだ、飲んでもらえばいいんだ!

私はスクバからラッピングされてた、マグカップを
取り出した。
ホントは合宿中に使おうと用意した
ファイヤーキングのジェダイカラーマグ。

それにコーヒーを作って、大久保さんに渡す。

「どうぞ、熱いです、気をつけてくださいね」
「・・・ふぅむ」

飲むのを躊躇っているのがわかる。
まあ、未知の飲み物には違いないし。
飲んでみて、思いのほか苦かったのか、
大久保さんの眉間に皺が寄っている。

「なんと・・これは煤から出来てるのか?」
「違います、コーヒー豆という植物から出来てます」

コーヒー瓶を渡す。

「これは・・ギヤマンか?それに色つきのホトガラ」
「ギヤマン・・・えっとガラスです、そこに茶色い豆が
描いてあると思うのですが、それがコーヒー豆です」


とりあえず豆の絵が付いているから、それで納得してもらうしかない。
他に説明しろって言われても困るし。

「・・・大久保さん、極渋茶がお好きなのに
コーヒーはダメですか?」


「小娘、渋味と苦味は別物だ」

そう言って、コーヒーを啜る。

「・・・不思議な飲み物だな、苦味の中に少し酸味があるな、
このコーヒーとやらも悪くない」

「え?大久保さんわかるんですか?」

初めてコーヒーを口にして、ちゃんと味がわかるんだ。
きっと私は驚いた顔をしてたんだろう。

「お前は私を馬鹿にしてるのか?小娘よりはまともな味覚を持っている」

と言い放った。

「このカップもいいな、手触りはよいし、熱さをあまり感じずに持つことが出来る」

じっくりとジェダイカラーマグを眺める。
私のお気に入りを大久保さんも気に入ってくれた。
なんか、ちょっと嬉しい。

「じゃあ、それ、大久保さん専用にします」
「なに?」
「私には大久保さんから頂いた、このカップがあります。
だから、それは大久保さん専用で、たまには一緒にコーヒー飲んでください」


そいういうと、大久保さんはふっと笑って。

「わかった、時々は八重の部屋にコーヒーを飲みに来よう」

そう言ってくれた。

そして・・・

「小娘、コーヒーを飲みに来たぞ」

二人だけのコーヒータイムが始まる。


☆目次☆


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