正体不明の彼女が寺田屋に来て、仲間にも変化が訪れた。 元々女好きの龍馬はいいとして、人とうち解けるのが苦手な以蔵が、 予想外に彼女と仲良くなっている。 以蔵本人は烈火のごとく否定するだろうが、心なしか最近は人柄も 丸くなってきたように見える。 そして・・・僕自身も。 初めは正体不明の彼女に気が許せず、常に監視するように様子を伺った。 その為、僕の部屋の隣に彼女を置いた。 そんな彼女は驚くほどに常識を持ち合わせていないことを知った。 女子でありながら剣の道を志していたり、かと思えば料理は苦手。 釜戸の使い方を知らなかったり、井戸の使い方も知らないときた。 どこぞのお姫様ならいざ知らず、庶民の出だという彼女。 今までどのように生きてきたのか不思議で仕方ない。 そんな彼女は次第に僕の中でも存在が強くなってきた。 初めの警戒対象としての存在ではなく、もっと違ったものだ。 そして、その感情に警鐘が響く。 『これ以上、彼女に近づくな』 この感情の正体に気づかないほど幼くも疎くもない この感情は非常に危険だ。 今、感情に振り回されるわけにはいかない。 わかっていても自制がきかない、彼女のことになると感情が乱される。 この出口の見えない迷路に、僕は迷い込んでしまったようだ・・・。 <end> |