「何だか今すごく吐き気がするんだ。死にたい気分なんだ。理由もないけど手首を切りたい衝動に駆られる。この臓腑に詰まった汚物を引きずり出してついでに心とか命とかよくわからないものの詰まった心臓も引きずり出して空っぽになって楽になりたい。いやもう空っぽ何だろうか。何言ってるかわかんねーよな。俺もわからない、わからないんだ」



なにも。



 そう言って十代は、公園に取り残されて家路を見失った幼子のように泣きそうな表情をした。
 数百年続く戦いの合間に見出した一時の休息のような時間だった。時間にすれば僅か三時間。だがその空白は耐え難い空虚を歴戦の英雄にもたらした。

 走り続けていなければ。逃げ続けていなけれ ば。立ち止まるというのは即ち彼にとって正気にかえる時だ。自分と向き合うその瞬間を十代は何よりも恐れた。

「わからないのに怖いのがいちばんこわいことだって、お前も知ってるだろ?」

 少年であった自分から変わらぬ大きな目から頽廃と疲弊に汚れた涙を流しながら十代が懇願する。同意を求める疑問で語尾を濁したのは汚い大人のやり口で。
 震える背中を抱き締めて引き裂いて首を絞め脳髄を砕くこの腕も爪も、何より彼が望んだモノに外ならずその事実がなおさら彼を傷つけると知りながら、久方ぶりに与えられた自由に歓喜する魂は傀儡の生身を手繰られるまま動かした。結局パラドックスも自分で息をしているふりをしたかった。自分と向き合う瞬間に怯える子供だった。








酷薄する、

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