がりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりごり。
 
 びりびりと末端の神経に電流が走る。指の付け根から掌全体にかけて鋭い痺れが迸る。
 犬歯をたてられた皮膚は確かな苦痛の信号を送っている筈なのに、当の自分は余りに無関心だ。シナプスが焼き切れているのかもしれない。
 もう此処に来て随分長くなる。とっくに脳内は少年に汚染されているのかもしれない。或いは汚辱か。
 どちらにしろ、至極幸福そうに己の指を頬張る彼を、遮ろうとか制止しようとは思わなかった。その程度には自分もイカれてきているということか。
 
 がりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりごりっ。
 
「ん、出来た」
 
 唾液と僅かの血液とで口の周りを汚しながら、少年が指を解放し、得意気に指を絡めてくる。
 先刻まで酷い嗜虐の対象とされていた其処には、確かな痕跡が刻まれていた。
 
「俺と付き合ってくれるんだろ?
だからプレゼント」
 
 満面に無垢な笑みを浮かべて、少年は繋いだまま手の甲にキスを捧げた。
 それに応じて、取り敢えず此方もぎこちなく微笑んでおいた。
 
 
 
 
 
    ド
 
     ッ
 
    ペ
 
   ル
 
     玄
 
    関
 
 
 
 
 左手薬指の付け根は深く抉られ鮮血滴るリングが嵌められた。



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