「眠いんだけど寝たくないんだ」
ごろごろと他人様の寝床を侵略しながら少年が呟く。因みにその他人様とはほかならぬ私である。
「寝たらヤな夢見そうだし変な記憶掘り返しそうだし後何か色々イヤだし、
怖いし」
枕を抱き込み顔を埋めて、拗ねた子供のように身を丸くして、その背中にいとけない拒絶を覗かせて。
「起きてたら、意識があったら、ちゃんと自分の思うように出来る。何にも怖いことなんてないような気がするんだ。俺が俺だって俺がちゃんと認識できてさえ居れば、それだけで」
こわくはないと。
肩越しに窺うような視線をちらりと寄越して、それが悪戯が発覚して叱咤を恐れる幼児のようで、また同時に共犯者へ誘う蠱惑的な秋波も含んでいて、
結局
「…それは私の寝床を横取りするに足る合理的な理由かね?」
裏 表 ラ バ ー ズ
「だってユベルも覇王もオネストも無理矢理にでも寝かそうとしてくんだもん。バレるまででいいから匿えよ」
「バレた場合の私の身の安全は保障されるのか?」
「大丈夫だろ。俺が死ねって思わない限り誰も死なないから」
「……。」
「あんたのベッドが一番落ち着くんだってー」
「熟と君は、性根が腐り切っているな」
そうして、結局不眠の夜が更ける。