揺らめく瞼

「ん」

目の前に差し出された手をサッチは凝視した。

「自分で起きろ」

伸びた手を軽く叩く。

「ん」

それでもまた差し出される手。

「せめてもう少し何か言え」

「・・・起こして」

ようやくまともに口を利いた。
サッチは仕方なく手を差し出した。

手が引かれ、寝ていたマルコの体が起き上がる。

「ん」

「ほらよ」

服を放ってやる。

「ん」

突き返された。

「・・・またかよ」

「ん」

答えの主の瞼はゆったりとした上下を繰り返している。

「はぁ・・・」

ため息を吐きつつも差し出された服をとり、それを体に掛け、袖を通させる。

「ん」

「・・・下もかよ」

「ん」

最早意味がわかっているのかも怪しい。

「ほら」

布団をめくり、少しは足を動かすように命じる。

「ん・・・」

けれども眠気眼の体は重く、てこずりながらサッチはズボンを履かせた。


「ほら朝食に行くぞ」

「・・・・・・・・・」

「こらっ!」

前後に揺れていた体が前に落ちる。

「寝るな!起きろ!」

叩けば、煩わしそうに眉を寄せる。

「起ーきーろー」

「ん・・・」

「あーもーいい加・・・」

言葉は続かなかった。
サッチの大声を塞いだ唇が今離れる。

ちゅっ、という軽いリップ音が響いた。


「なっ・・・!」

「もうちょっとだけ・・・」

そう言い残すとポスンとマルコの体はベットに落ちた。










「あれっ、サッチ一人か?」

「一人だよ!」

その数分後、わずかに顔の赤いサッチが一人食堂で食事をする姿が見られた。

隣の席は空いたまま。
本来そこにいるはずの人物は未だ夢の中だった。



(おはよう、サッチ)
(随分とおそようだな)
(けど、まだ朝だろい?)
(もうすぐで昼!)
(起きたら服着ててびっくりだったよい)
(それ着せたの俺!)
(何もしなかっただろうねい?)
(お前・・・!)


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