一途的狂愛

「マルコ好きだ」

突然サッチに呼び出されたかと思うと信じられないような言葉がその口から吐き出された。

「はっ、誰にでも腰振るようなやつのこと信じられるかい」

「だろうな」

バカにした口調にも関わらずサッチは冷静だった。
逆に問いてきた。

「ならなんで俺がそんなになったと思う?」

「知るかよい」

敢えて興味なさそうに返す。
本当は少しだけ気になっていた。
こいつだって元は女好きのくせになぜ男に抱かれるようになったのか。

「知ってしまったからだよ」

「何を?」

「本当の恋を」

サッチの目を見れば怖いくらい真剣に俺を見つめている。

「ちなみに誰をだい?」

わかりきった答えを聞く。

「お前」

サッチも律儀に答えた。
その足が一歩前に出る。
それに合わせて自分も一歩下がった。
足は止まったが声は止まない。

「本当はお前以外いらないんだ。俺に触れるのはお前だけでいい」

その時背筋に襲ったのは悪寒。
震えるような思いが体の中を駆け巡った。
やつの声色がそうさせた。

「そのくせ他のやつらに腰振るのかい」

心の中の動揺を隠して嘲笑う。

「だってお前は俺を抱いてはくれないだろう?」

「ああ」

俺は男など抱くのはごめんだ。

「だからだ。お前以外に抱かれるならだれでも一緒なんだよ」

「けど抱かれる意味がわからないねい」

うっすらと笑みを浮かべるサッチに言った。
女を抱くだけでもいいだろうに。

「抱かれながら想像するのはお前のことばかりだよ」

返ってきた答えに呼吸が止まる。

「俺を抱くやつ全員、お前の代わりだ」

いつの間にかサッチが俺の目の前まで距離を詰めていて俺に触れる。
その手をすぐさま振り払った。

「なんでそれを俺に言う?」

今更だ。
俺が抱くことないとわかってるだろうに。

「わかってる。でももう無理なんだ」

何が?
まるで俺の心の中を読んだように答えを返す男を見つめた。

「お前が欲しくて欲しくてしょうがない。限界なんだよ」

サッチと目が合い、その中の光が揺らめくのをただ見ていた。

こいつはバカだ。
愛されないと知って他の男に抱かれるようなバカだ。
けれど一途。
そう、それは恐ろしいと感じるほどの・・・

「マルコ」

やつの瞳がゆっくりと閉じられ、また姿を現す。
そして細くなり、笑った。

「愛してるよ」

なんでだろう。
愛の言葉なのにどこか冷たい。
それはきっとそれ以外の感情が全く感じられないからだ。
愛以外の感情、いや自分の愛という感情以外は何もない。
俺の持つ思いすらも寄せ付けない。

「マルコ」

伸ばされる手に全身が震えた。


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