意地悪な彼

マルコside

最近、サッチに避けられている気がする。好きだと告白され、舞い上がっていたところにこれだ。やっぱり、あれは気紛れだったのか。それか、俺が何かサッチが傷つくことをしてしまったのか。そうだとすると、一体自分が何をしでかしたかもわからないものだから、途方にくれる。一人で考えるのもまどろっこしいので直接本人に聞こうともすると逃げられてしまう。

「まったく…何なんだよぃ」

一人甲板に立ち、ぼけっと海を眺める。遠くに船が見えるが帆を見る限り商船だろう。

(そういや、食料庫に空きができはじめてたな…)

そろそろ上陸要請を出さないと、食料が底をついては飢え死にしてしまう。オヤジのもとへ行こうと足を踏み出した瞬間、ふっと感じた視線。振り向いたが誰もいなかった。

「……?」

まぁ、いいか。
止めていた足を動かしてその場を去った。


その後も何度か同じようなことがあった。気配から同一人物と思われる。
相手が誰か確かめようと身構えていたら。

(きた…!!)

やはり振り向いたときには姿はなかったけれど、視界の端に捕らえた見慣れたスカーフ。

「サッチ…?」

今までのも彼だったのか。だとすると……。この頃の行動の訳が読めてきた。

「ったく、不器用な奴だよぃ」

ま、そこが可愛いんだけど。
逸る気持ちを抑えながら愛しい恋人を探しに行こうと思ったが、はたと留まる。

(このまま俺から行くのはつまんないねぃ)

少しほっといて向こうの出方を待とう。なんて考える自分は随分と酷い奴だ。

(仕方ないよぃ。サッチが相手なんだから)

さぁて、どうくるかな。






「おい、マルコ」

それからまた、暫くたったあと。相変わらず、というか前よりサッチとの交流がなくなった。そんな時、呼び止められる。この声はビスタだなぃ。

「何か用かぃ?」
「何かじゃないだろう。サッチは?」

咎めを訴える目に、言わんとすることがわかったが敢えて知らないふりをする。

「部屋にいるんじゃないかぃ?」
「そういうことを言ってるんじゃない。わかるだろう」
「何が?」

尚もシラを切れば、目の前の端正な顔が怒気を含んだ。眉間の皺が寄る。

「お前はそれでも、アイツの恋人か」
「何だぃ。俺がサッチを取ったのがそんなに腹立たしかったかぃ?」
「いい加減にしろっ!!!」

サッチはかつてビスタの弟子だった。見習いだった彼はビスタのその剣術に惚れたらしく。ビスタも喜んでサッチを育てた。
それなりの想いがあったのではないかとからかい混じりに言えば、逆鱗に触れたか。思い切り壁に叩きつけられた。

「っ…!!」
「お前はっ!…よく知ってるはずだ…!あの子のことを…」
「………」
「本当に大切に想っているのなら!!……サッチを泣かせるな」
「…!!?」


サッチがナイテイル?


聞かされれば身体は無意識にビスタを突飛ばし、泣いているだろう彼のもとへ走り出していた。



時刻は夜。闇が落ちた甲板は昼間とは全く違う雰囲気を纏わせていた。当直の人間以外は部屋で休養を取っているため人気はあまりない。そんな中、船尾にひとつの影。それから風に乗って流れた光の粒にぎゅっと胸が締め付けられた。

「ほんっとに、馬鹿だねぃ。お前さんは」

もっと優しい言葉をかけてあげたいけれど、素直に言えない俺を許してくれ。

「あーあー…ぶっさいくな顔して…」

一人で泣くのはこれっきりだよ。

震えるからだを閉じ込めて、逃げないように、離さないように。

「サッチ、好きだよぃ」

誓うよ。だから、


愛し合おう



『くせ毛』のぱるく様より10000hit企画でいただきました。
書かれるどのCPも素敵なのですが今回は14で「甘えたいのに上手く甘えられないサッチ」という内容でリクエストさせていただきました。
悩むサッチが可愛くてマルコがかっこよくて!
二人とも愛しい(o´Д`o)
ビスタもかっこよかった。
本当にありがとうございました!


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