居眠りに要注意。

すごく大切な話しをしているのだろう。でも私はウトウトと夢の中。スモーカーさんも隣にいるんだから起してくれればいいのにと人のせいにして眠気と戦っている。いや、もう眠気には負けているのか。なので目を覚ました時、私には重大な任務が課せられていたのだ。

話しを聞けば会議中にずっと寝ていた私にセンゴク元帥が大変お怒りで、随分とややこしい事を任務として残していった。その内容は、明日七武海の会議があり、参加率がなかなかに悪いので私はそのお迎え人になっていたのだ。

「へ!? まさか全員呼んでこいとかじゃないですよね」
「そこまであの人も鬼じゃないだろ。あのミホークの迎え人だと」

ミホーク? 鷹の人だ! え!? 確か一番召集に応じてくれない方じゃないですか! うるせーな。自分が招いた結果だろ? ごもっともなご意見。でも、行きたくない。ヤバイ。若干涙目じゃない? 私? ……スモーカーさんは上の人の言う事聞かない人物として有名じゃないですか。今回の件も可愛い部下をそんな所に行かせらないとかなんとか言ってくださいよ。ほら、これから私達も違うところで任務じゃないですか。ここは任務を優先させてね!

「お前がアイツを連れてこれるのかって方が興味ある」

その一言で私は今、彼が拠点としているシッケアール王国跡地へと船を出港させた。G-5としての任務はあるため私をそこに送り届けて、任務に向かうという。1人ぼっち心細い! ……でも説得すればいいんだ。出来るー出来ないーと悶々と悩んでいる間に船は着いてしまった。

「絶対迎えに来て下さいよ!」
「わかってる。ちゃんと子電伝虫は持ってろよ」
「わかりました! 肌身離さず持っています!」

とりあえずスモーカーさん達が迎えにくるまでに説得して、明日またここへミホークさんを迎えに来るという事になった。最初はそうしたら今日説得出来たとしても、明日には心変わりしてしまうだろうとなぜか私があの人のところに泊まるという末恐ろしい事を言われたがそこは全力で拒否をした。

任務へ向かう船。私は城へ。しかしすごい大きいな。とういうか、本部から人が来るって連絡してもらえばよかった。でも、そんな心配は無用だったようで。玄関先にはミホークさんが椅子に座っていた。なんかすごく雰囲気がのほほんとしている気がするのだが。しかし私はここで重大な事に気づくのだ。ミホークさんと初対面ということに。本部ですれ違った程度だよ。こっちはよくも悪くも知っているがあっちからしたら何だ。この小娘程度だよね!?

「さっきから見ているが主はおもしろいな」

後ろからいきなり聞こえた声。振り返るとミホークさんがすぐ後ろに立っていた。うおぉ! っとなかなかに恥ずかしい反応をしてしまった。いや、びっくりしたんだって。しかし、いやそうだよね。こんな静かなとこに船来たら普通わかるよね。こんな所に何用だ。ところというより人に用がありまして。人……。ここには私しかいないが。

「えっと、あなたに用がありまして」

何だ。この会話。漫才か。とりあえず中に案内しようと言われ私は大人しくミホークさんのあとを付いていく。しかし、シッケアールというだけせっかくセットした髪がピョンピョン跳ねてしまう。さっきまで会議で寝ていて元から髪ぐしゃぐしゃだろうがとどこからともなく聞こえてきたスモーカーさんの声を頭から振り払う。ここに座れとソファに案内された。結構座り心地がいいソファだ。それより子電伝虫に連絡が入る前に説得してしまわないと。まず自己紹介か。

「初めまして、私##name1##と言います」
「知っている」
「連絡来てましたか?」
「連絡何の話だ? 主のことは知っている」

あのG-5支部のところだろう。あそこは女2人しかいないから目にはつく。左様でございますか。……それで今日伺った用件なのですが。そこまで言いかけて私は口を閉じてしまった。何て説得しようか考えていなかったのだ。でも、これも仕事の1つ。必ず説得させなければいけ ないのだ。ミホークさんを見るとじっとこっちを見ている。ああ、早く何か考えないと。

「今日伺った用件ですが、明日の七武海の会議に参加していただけませんでしょうか!」

自分で言った言葉にびっくりだよ。何でド直球なんだよ! 自分! ミホークさん微動だにしないよ。どうしよう。この空気。えーと、センゴク元帥に頼まれてきたんです。つまりは迎え人ですね。

「なかなかミホークさんが召集に応じてくれないそうなので、迎え人を用意したみたいなんです」
「そうか。しかし行かないぞ」

ミホークさんもド直球。とにかく私も言葉がない。……主はG-5なのだろう。先に話しを振ってきたのは意外にもミホークさんだった。それにしても七武海の会議に出席するという主旨からはだいぶ離れているな。いや。離そうとしているのか。とりあえずここは軽く世間話でもして空気を軽くしよう。

はい。そうですよ。なぜ、あんな所にいるのだ。あそこは無法者が集まっていると聞いたが、主がそこにいるというのは似ても似つかない。まぁ、端から見たらそう見えるのだろう。私だってたしぎさんがいなかったらあんな所にいない。

「スモーカーさんが異動になった時に事務関係を任せられる人が欲しかったみたいです」

私は元々本部で地味に事務員をやっていた。そして気づいたら今のところにいたのだ。今のところに異動と話しが出た時は結構強引に引き抜かれたんだったっけ。

「事務員なのになぜか船に一緒に乗せられて……」

って何でこんな思い出に浸っているのだ。ミホークさんのペースに乗せられるところだった。ミホークさんを見ると気のせいか笑っているように見えた。……よし、話しを戻そう。まず、何でミホークさんが会議に出たくないのか原因を探っていこう。

「なぜ、会議に出ないんですか?」
「つまらんからだ」

ごもっともです。ミホークさん。私だってさっきまで、会議がつまらなかったから寝てしまっていたのだ。これ私が説得しても説得力にかなり欠けるよね。何でセンゴク元帥私なんかに頼んだんだろう。ああ、誰に頼んでも拒否されるから拒否出来ないような状況の私にこの話しが来たのか。

「それにしてもなぜ主みたいな七武海とはほど遠い事務員が迎え人なのだ。」

むしろほぼ遠い人からの方いいからじゃないですかね? なんて苦し紛れの嘘。しかしさすが七武海という所か。私の嘘はバレバレのようで。本当は? と聞かれてしまった。本当のことを言ってしまえば、この任務は確実に失敗だ。言葉に詰まっているところにプルルルルルと子電伝虫からの音。

いいタイミングで鳴った。よかったと内心思いながらすみませんと席を離れて、子電伝虫に出た。すみません。私説得出来てなくて、船で……。待っていてくださいと続けようとしたが、何か違和感がする。よく耳を澄ますと後ろから戦闘みたいなざわつき。まさか。私の嫌な予感は耳に飛び込んできたスモーカーさんの言葉で確定してしまった。

「すまない。任務が思っていたよりかかりそうだ。今日はそこに泊まれ」

ええ!?!? なんて驚きはしない。 一応予想はしていた。でも現実になってしまうとがっくり来てしまうもので。ミホークに代われという声が聞こえたが放心状態の私。子電伝虫からの声が聞こえたのかミホークさんが私の掌にあった子電伝虫を自分の手に乗せる。

「ミホークだ」
「一晩だけ泊めてやってくれ。悪いな」
「了解した」

ここまでの会話はなんとなく聞いていたが、すぐにこれからどうしようと頭が切り替わった。会話が終わったようで、私の掌に子電伝虫が返ってきた。心配するな。部屋はあるからなとミホークさん。まだ子電伝虫は繋がっているらしく、あまり七武海は信用するな。それといろいろ気をつけろよとそれだけ言われ子電伝虫の通信は切れた。

「あの男は随分、主を大切にしておるみたいだな」
「大切だったらこんな所に放っておきませんよ。とにかくとっても嫌ですが一晩だけお世話になります」

説得どころではなくなってしまった。何で初対面の人とこんな事にならなければいけないのか。確かに海軍なんかにいれば何が起きるかはわからないけれど。でも何より私がここに派遣された理由があやふやになってよかった。ミホークさんももう気にしていないようだし。チラッとミホークさんを見るとさっきみたいにジッとこっちを見ている。私はソファに座り直して、ミホークさんと向かい合った。よし。改めて本題を。……ん。何かミホークさんが近い。そう思った時には私は腕を掴まれ、ソファに押し倒されていた。フカフカなソファは2人分の重さで沈む。

「ミッ……! ミホークさん!」
「先程の会議に出席しろという話しだがな。気が変わった」
「じゃあ、来てくれるんですね」
「主が抱かせてくれたら出席してやろう」

思考回路完全ショート。でも、危険信号は頭の中で鳴り響いている。抵抗しようとしてももちろん敵うわけなんかなくてびくともしない。スモーカーさんが言ってたいろいろってこういう事を言っていたのかなんて不思議な事に少し冷静な自分もいて、どうする術もない私にミホークさんはどんどん体を密着させてくる。近い、近い! でもそうしたら出席してくれる。私は任務を果せられているのだ。でも、でも。ぐるぐる回る思考の中でもミホークさんの顔がどんどん近付いてきて、唇と唇があと数センチで触れるという距離までに来た。でも、ミホークさんは止めることなく唇と唇が触れてしまった。触れるだけのキスだけで終わったのが幸い。……私のファーストキス!!

「嘘だ。主の嫌がる顔が見れただけで十分だ。明日は出席してやろう」

さっきまで私の動きを封じていた体はそう言って離れていった。何コレ。何コレ。最低です! 泣きはしないけれでも涙目で涙声な私。やっぱり迎えに来てほしかった。そういう顔は男を煽っているという事をわかっているのかと悪趣味な声が聞こえる。さらにいたずらげに今日は主、ここに泊まるのだぞ。そう言って真っ赤になる私を見て楽しんでいる。

「もう部屋案内してもらえますか?」

今日、迎えは来ないのだ。とにかく1人になりたい私は鍵付きの部屋でお願いしますねと精一杯の抵抗をした。会議には来てくれると言ったのだ。私の仕事は終わった。案内してくれた部屋は本当に鍵付きで、部屋に入った瞬間すぐさま鍵をかけた。おいてあったベッドに体を沈めると、さっきの事はなかった事にしよう。寝て忘れてしまおうと目をつむった。疲れていた体は早く眠りにつく事ができた。

プルルルと朝方の子電伝虫の声で私は目が覚めた。子電伝虫に出るとスモーカーさんの声。今船が着いたから出てこいという通信だった。一刻も早くここを出たい私はすぐさま出る準備をして、部屋を出た。最初に案内された部屋に入るとミホークさんは先に起きていたようで、おはようと挨拶をされた。やっぱり寝ても忘れられるわけがないのだ。なるべく顔を見ないようにして、船が来た事を教える。

「おはようございます。船が来たみたいなので、一緒に本部に行きましょう」

一応確認しておきますが、心変わりしてないですよね。あれだけの事をされておいて今更行かないと言われたらたまったもんじゃない。そこはミホークさんも悪いと思っているのか。ああいう事をしておきながら行かないとはさすがに私も言えないと返ってきた。

城を出て最初に船を降りた所と同じ所に船が止まっていた。手を振るとたしぎさんが手を振り返してくれた。私は早々に船に乗り込みたしぎさんに昨日の報告書のまとめを頼まれ、船の中へと入った。後ろを確認するとちゃんと船に乗ってくれているミホークさんがいた。もうこれ以上は関わらないようにしよう。あー、これからは居眠りなんてしないようにしよう!


居眠りに要注意。
(##name1##に何もしてないだろうな)
(主がここに泊めるのが悪い)
(……それは何かしたと受けっとっていいんだろうな)
(そう解釈したのならそれでいい)
(てめぇ)


+++
スモーカーさんは夢主ちゃん溺愛です。ミホークさんはとまどっている夢主ちゃんを見たかったのもあると思いますが、女関係で焦ってるスモーカーさんも見たかったって話です。
無駄に長い。
読んでくれてありがとうございました!
煙と鷹視点も書こうかな。




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