教卓まで6cm

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あれからよく考えた。そういえば、先生と生徒の恋なんてダメなのではないかと。でも、好きになったのはしょうがないという思いもある。こういう時は経験豊富な友達にそれとなく聞くのが一番だろう。

「ねぇ、もし恋しちゃいけない人に恋をしてしまった場合って諦めた方がいいの?」
「んー。でも、しょうがないんじゃない? 別に、自分たちが気にしなければ。急にどうした?」
「そういう場合ってどうするのが一番なの? ってお姉ちゃんに聞かれたから。私、恋ってよくわかんないし」
「ふーん。お姉さんに頑張ってくださいって伝えておいてよ」
「うん。わかった」

ごめんよ。嘘ついてしまって。でも、やっぱり先生に恋をしたなんて言えない。ましてや担任だなんて。


放課後になり、いつも話しをしながら居残る友達は家が厳しいらしくテスト週間中は強制的に塾だという事で帰ってしまう。一緒に帰ろうと誘われたが今日は先生に古典を教えてもらうことになっている。人が混む時に帰りたくないと理由をつけて先に帰ってもらった。ちょっと待っているとまた眼鏡をかけた先生が教室に入ってきた。

「先生。お願いします」
「それにしても今日も寝てたな。ちゃんと聞いてれば居残りする事もないのに」
「あの授業の空気が眠くなるんです」
「眠くなる授業で悪かったな。さっ、始めるぞ」

教科書の復習をして今日授業でやったというプリントを解いた。真面目にやれば出来るのにと見せられたプリントは10点満点中8点だった。

「やった!」
「古典はこのままやっていけばいいとして…。他の教科はどうなんだ? 毎回英語と数学と理科が壊滅的だが」
「他の教科もいつもより少しだけ勉強しているので、多分大丈夫です。赤点ギリギリじゃないと思います。来年は受験ですからね」

意識しだしたのは偉いな、と頭をポンポンされ優しく笑った先生。やめてくれ。心臓がうるさい。

「そうですよ。そういえば、先生次はどこの学年になりそうなんですか?」
「多分また2年生担当だろうな。3年の古典も教科担任になりそうもないな」
「そうなんですか。先生と会える機会減っちゃうんですね。そうなると」
「3年になっても聞きに来れば教えるぞ」
「だって先生普段女子に囲まれっぱなしじゃないですか。私そういうの苦手なんです」

だったらその時はまた時間をつくってやるなんて。そんな事言われたら勘違いしてしまうじゃないか。じゃ、そうします。と嬉しさを隠して返事をした。やっぱり2人きりの時間が無くなるのは惜しい。時計を見ると4時半。とくにバイトもせず学校終わりはフラフラと暇している私はそのまま先生に話を振った。

「先生って女子に囲まれて嫌って事は彼女いるんですか?」
「急になんだ?」
「気になったんで」

そういえば重要な事を聞いていない。ここで居るなんて言われたら勝ち目なんて私には全くない。

「別にいないが。気になるヤツならいるけどな」
「へー」

誰かなんて聞かない。悲しくなりそうで、先生の前で泣きたくなくて。

「高校生はそういうの真っ盛りだろ。最近登下校でよくカップル見かけるしな」
「そうですね。朝からイチャついてるの見るとイラッとします」
「美鈴はそういうのないのか?」
「生徒にそんな事聞かないでください。私そろそろ帰りますね。」

鞄に用具をしまって教室を出た。


(これ以上話しをしていたら勢いで言ってしまいそうだ)


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