2.次の数字の私

あれから跡部さんは何かと私に構ってくれるようになった。学校から帰って来て、跡部さんがいる。それが日常になっていた。暫く経ってなんとなくいい雰囲気になってコトに縺れてしまったのは。今まで世間から放置され続けた私なんかに構ってもらえるのが嬉しかった。……跡部さんに彼女がいることくらい知っている。その人に悪いと思うけど私にとって跡部さんは必要な存在になっていた。

今日も跡部さんの雰囲気に呑まれて。事情後跡部さんに腕枕され寝ていると跡部さんのいつもの確認が始まった。

「今日は学校行ったか?」
「行きましたよ」
「本当か? 忍足に確認の電話とるぞ」
「ごめんなさい、嘘です」

俺に嘘つこうなんざ百年早いんだよと頭を小突かれる。そんなやり取りがとても心地良くて顔が緩んでしまう。気づかれたくなくて顔を背ける。

「体がだるくて起きられなかったんです」
「あんまりサボるんじゃねーぞ」

そう言って私の頭を腕から避け起き上がり冷蔵庫に水を取りに行ったようだ。下は履いているけど上半身は綺麗に鍛え上げられた体をさらけ出している。出て行った背中をボーッと見送る。寝室に戻ってきた跡部さんの手にはペットボトル。ふと最近気になっていたことを聞いて見た。

「……彼女さん……いいんですか?」
「ああー。家に行っても最近仕事で忙しいって相手してもらえねーからな」

目の前に差し出されたペットボトルを受け取り水を喉に流し込む。跡部さんに返すとサイドテーブルにペットボトルを置き私に被さる様にキスをされた。触れるだけの少し長いキス。

「あんまり気にするな」
「気にはなりますよ」

きっと素敵な人だろう。私と比べたら何倍も。いつ捨てられるんだろう。そんな考えがずっと頭の中にある。こんな気持ちを伝えたところで跡部さんを困らせるだけ。雰囲気に呑まれたのなんてただのいい訳。実際一緒にいたいと言ったのは私なのだ。きっと同情なんだろうな。またそんな事を考えては1人馬鹿みたいに不安になる。

いきなり跡部さんに包み込むように優しく抱きしめられた。……なんてタイミングがいいんだろう。いや、何でわかってしまうのだろう。私は何も言葉にしてはいないのに。アイツの事は俺の問題だからそれ以上余計な事を考えるなだなんて言ってくれて。


(そんな事を言われるとますます離れたくないと強く願ってしまうのです)



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