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「高杉と出かけたんだろ? どうだった?」

あの日から銀さんの様子が少しおかしい。別に優しいのに変わりはないんだけど、寂しそうな目でこちらを見てくる。

「どうって楽しかった……ですよ」
「何、その間」

ヘラリと笑った銀さんはいつもと同じだった。開店準備を終えて店を開ける。今日は金曜の夜だし人多いかな。

「銀さんここにいつも置いてあるビンは?」
「先に処理しといた」

珍しい。銀さんが仕事してる。何か調子狂うな。でもそんな事を深く考えている暇はなく、3組同時にお客さんが入ってきたので対応に回った。

忙しくしているとあっという間に3時。グラスの片付けが追いついていなかったので、人がひいている間に終わらせようと裏に回り私は裾を捲る。しかし扉が音を立てて開くので仕方なく表に戻りいらっしゃいませと声をかけると高杉さんだった。高杉さんは特に気にもせずカウンターに座る。

「うい、月曜ぶりだな」
「そうですね」
「まだ気にしてんのか?」
「それは」
「やっぱり何かあったの?」

私達の会話を黙って聞いていた銀さんがどもっている私の言葉を遮った。それにしても何で銀さん、私と高杉さんの月曜のことそんなに知りたいんだろう。

「んー、俺がういに告ってフラれただけな。なァ?」

あの余裕そうな表情。あの時は本気だと言っていたが。高杉さんもよくわからないけどこれはもう解決した事でいいのだろう。

「あー、そうなんですよ」
「それだけだ。だから心配するな銀時」
「心配って何を?」
「ういちゃん、洗い物溜まってるししてきて。高杉の言うことは気にしないでいいから」
「……わかりました」

ちょっと納得いかないけど洗い物をしないと今日帰りが遅くなってしまう。私は銀さんの言うとおり裏に戻って洗い物を始めた。

洗い物がようやく片付き閉店まであと30分。表に戻ると高杉さんは帰ったあとだった。銀さんは戻ってきた私に気づくと、ちょっと早いが店前クローズにして来てと言われ看板をひっくり返しに行く。床掃除をする為に掃除道具を引っ張りだし、掃除を始める。

「ういちゃんさー、就職ってどうするの? もう来年じゃん」
「あんまり考えてないですね」
「ここに就職する? ってかもうういちゃんいないと回らない」

考えてもなかった。それに素直にそれも有りだなと考える。

「給料とかその他諸々もちろんきちんとするし。というより今と仕事内容もそんなに変わらないし」
「そうですね……」
「でも、他も見たいとか後々あるからもしれないし最終選択として入れておいてもらえたらなぁって」
「私今だいぶいいなって思ったのでここで働こうと思います」

そんな簡単に決めていいの? と言われたけどこの仕事好きだし他に行ってまた人間関係とか面倒くさいし。そんなに迷うことでも無いような気がする。

「じゃあ、一応書類とかあるから4月から正式なスタッフね」
「はーい」

いきなり就職先が決まってウキウキな私は銀さんの本当に言いたいことはまだわかってなくて、月曜空いてるなら空けといてと言われてもその時はまだ詳しい説明をしてくれるのかななんて考えていた。



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