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「はい。ジントニックです」

家の近くにある小さなバー。大学生活も適当に過ごし2年。3年になる時にふとバイトをしようとバイトを始めた。それがここsilverというお店。マスターの坂田銀時1人で経営しており、カウンター席が7つだけとかなり小さなお店。そんなお店の経営者、坂田銀時は一言で言うと超適当人間。だけど顔だけは良いものだから女性客人気でお店が持っているようなものだ。

「ういちゃんは働きものだねー」
「銀さんも働いてくださいよ。私が辞めたら発注とか追いつかなくてお店潰れますよ」

それは困ると慌てて注文を受けだしてお酒を作り始めた。そうそう銀さんが作った方が女性は喜ぶんだから。ここに来て半年が経つけど適当になっていたメニュー表を作ったのも私だし事務整理をしたのもほぼ私だ。本当に今までどうやって経営していたのか不思議なくらいだ。大学が経営学を専攻していたのでいろいろ実践的に出来るのは嬉しいのだけれど。接客は高校の時、ファミレスバイトだったからあまり困る事はなかった。

お店が開店してお客様が入っても私と銀さんは平然とお客様の前でさっきみたいな会話をする。お客さんも、ういちゃん相変わらずだねーと茶化してくる。お店の雰囲気はいいから辞められないんだよなー。

段々と閉店時間の3時に近づき客足は減っていく。私も裏に回り先に閉店の準備をし始める。すると、店の飾りが音を立てた。閉店1時間前。こんな時間に来るのはあの人しかいない。私は表に出るとさっそくウイスキーを注文しているお客さんに挨拶をする。

「いらっしゃいませ。高杉さん」
「お前まだ辞めてなかったのかよ」
「そうなんですよー」

近くの会社に勤めている高杉さん。いつも残業した後は寄ってくれる常連さん。銀さんと昔からの友人らしい。左目は眼帯で隠れているけどなぜか似合っているし、かっこいいなんて表現はありきたりだけどかっこいいしか出てこない容姿をしている。絶対昔からモテるタイプだ。おまけに仕事も出来るし弱点なさそうだよなぁ。

「ういちゃん辞めたいってそれ本気なの?」

ウイスキーを高杉さんに出しながら銀さんの視線がこちらを向く。

「冗談ですよ」
「でも、ういはバイトだからその内辞めるんだろ? そうしたら銀時どうすんだ?」
「……その時考える」

今の間は何だ。でも、銀さんの元で働きたい人なんてわんさか居そうだし困ることはないよね。でも、私が初めて雇ったバイトらしいしが。

高杉さんのグラスを見るとすでに空になっていたので次、何飲まれますか? と聞くと今日はもういいとのことなのでお会計を済ませるとまた来るなとお店を出て行った。私は店の前のかけ看板をクローズにする。後、私の仕事は店内清掃をして終わりだ。

掃除道具を持ってきて椅子を隅に寄せ、箒で掃いてモップがけをする。銀さんはレジ締めが終わってグラスを拭き始めていた。私はさっき疑問に思ってたことを聞いてみることにした。

「銀さん」
「んー?」
「私以外バイトの面接したんですか?」
「したよ。全員落としたけど」

他の人が受かってたら私はここにいないかもしれないし、それかバイト仲間が出来ていたかもしれない。

「何人くらい来たんですか?」

グラスを拭く手が止まり口元がいちにーと動いている。思い出さなければいけないほどの人数が来ているのか。

「8人……だったか?」
「聞かれても。何で1人も採用しなかったんですか?」
「家から近い。週6フルで来れる。真面目に働いてくれそう。これが基準だからな。家から遠い子多かったし。ういちゃんは全部OKだったから採用。それに、人件費の事もあるから1人しか雇えないし」

銀さんから人件費なんて言葉が。お酒の知識はすごいけどその他もろもろ危なっかしいから心配だ。それにしても週6フルで入れる人なんてそうそういないだろう。ましてや深夜の仕事だし。それにしても週6フルで入ってる私って、と改めて自分ヒマなんだなと思う。今年の半分ほとんどバイトしかしてない。もちろん大学が忙しい時は早く上がらせてもらえたりはできる。

掃除も終わる頃には銀さんもグラスを拭き終わっていた。掃除道具を片付けて椅子を元に戻す。黙々と椅子を運んでいるとカウンターに頬杖をついた銀さんが口を開いた。

「ういちゃんさー。高杉のこと好きなの?」
「何でですか?」
「いや、高杉来るとなんか嬉しそうだし」
「だってあんなかっこいい人と間近でしゃべれる機会なんてないですしねー。別に好きというより憧れですかね」

憧れねーと視線を落とし何やら考え始めた。いきなり何でそんな質問してきたのかも気になるけど特に意味は無いだろうと考え椅子を並べ終え裏に回り帰る準備を始める。銀さんはもう帰る準備をしてあるのか片手にお店を鍵を持ってクルクルと回している。

「今日もお疲れ様」
「お疲れ様でした」



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