大丈夫よと貴方に送りたい

---

「いたっ……」

暗い部屋。鬼兵隊の船の奥の部屋に閉じ込められてるんだろうなって言うのは何となくわかる。連れてこられてきた時は気を失ってたし。

高杉くんは私を攫って何がしたいんだろう。私はただ江戸で平和に暮らしていたいだけなのに。昔村塾で一緒に学んでいただけなのに。いつも遠目に見ていたあなたが数年後いきなり私の前に現れて一緒に来いなんて言うから驚いた。

正直一瞬誰かわからなかったけどすぐに思い出した。数年ぶりに見たあなたの右目は寂しそうな目をしていた。

今日も部屋に来ては私に刀を這わせて小さな切傷を作ってその傷を舐めるだけの行為。最初こそ抵抗はしたけどいつも続く行為と変わらない寂しそうな目に逆らえなくなって抵抗は止めた。

「うい」
「な……に？」

体ついた無数の切傷。名前を呼びながら太腿に新たにつけられる傷。そこを温かでザラザラした舌が這う。

「好きだ」
「うん」
「全部壊したいんだ。この世もういも全て」
「うん」

視線と視線が絡み合うとゆっくりと背後から抱きしめられる。全身がチクチクとした痛みが襲う私は高杉くんの中で浅い呼吸を繰り返し高杉くんの言葉に頷く事しかできないけど、それでも少しでも彼が楽になるのならば、私はこれで構わない。

「逃げないでくれ。ここにいてくれ」
「うん」

ほら、また刀が掠れる音が聞こえる。


大丈夫よと貴方に送りたい