1.進入禁止区域

死にたいな。そんな思いからこんな形で未来が変わるなんて思ってなかった。

死にたい。母と父が事故で亡くなった。奇跡的に助かった私は、親戚から厄介払いをされ一人暮らしをする事になった。別にこの世でもうやりたい事もないし、中学を卒業した後で高校入学を待つのみのこの時期。

友達は心配をしてくれて外に連れ出そうとしてくれたけどそんな気が起きなくて引きこもっていた。

なんとなくインターネットで自殺を調べていると今は自殺したい仲間が集い集団自殺をしているという。

「集団自殺って……」

1人で死ぬ勇気がないくせに死にたいんだ。可笑しな話。……何か書いてみるか。たった1文。私も死にたいと書き込みをしてみた。反応とか期待していなかったが、ナクラという人物から返信があった。

何となく危ないよなと危機感を持ちながらもやり取りを繰り返すうちに明日一緒に自殺しましょうと誘われた。……一緒に死ぬつもりは無いけど顔は気になる。そんな軽はずみな気持ちで私はいいですよと返した。


深夜1時。池袋の街は危なげな雰囲気を放っている。ナクラさんが示した場所はとある廃ビルの屋上だった。壊れている裏口から入り階段を登る。7階まであるこのビル。下を覗いてみたが、飛び降りたら即死であろう高さ。

屋上の扉までたどり着き、少し錆び付いていたドアを開けると嫌な音がした。屋上に出ると給水塔の上に月明かりを背に浮かび上がる影。黒い服を着ていて顔はよく見えない。

「ナクラさんですか?」

少し声を大きくして影に尋ねてみた。人影は私の前に飛び降りると人の良さそうな笑みでそうですと答えた。

「君は今日……死ぬつもりじゃなさそうだね」
「そっちもじゃないですか」

どう見たって死ぬつもりは無さそうだ。何だ、この茶番。くだらない。帰ろうとドアに手をかけようとしたら手首をつかまれた。びっくりして振り払おうとするけどその手は離してくれなかった。

「死にたいなんてこの歳でよくあることじゃないですか? 私本当に死ぬつもりないですよ?」
「じゃあ、何でここにきたんだい?」
「ナクラさんの顔が見たかっただけですよ。帰るので手離してくれます?」

そう言うと素直に離してくれた手。1度顔を見るとさっきまでの笑みは消え何かを楽しむ様な顔をしている。

「あなたは何で私を誘ったんですか?」
「僕は人間観察が趣味でね。死にたい人間の観察をしていたんだ」

可笑しな人。

「折原臨也って名前聞いたことない?」

折原臨也。ネット上で見たことがある。新宿を拠点にしている情報屋だったっけ。胡散臭いよね。情報屋なんて。

「僕がその折原臨也なんだけど何か感想があるなら聞かせて欲しいなあ」
「特に」

そう答えると不気味に笑い出した折原臨也。本人なのかはよくわからないがネット上で得た特徴とどこか似ているので本人の可能性は高いだろう。

「君さ、暇そうだから僕の下で働いてみない? そこらのバイトより時給良くするよ」

死にたいという軽はずみな気持ちと一緒だ。面白そうで時給がいいなんてこれからの生活が少し楽しくなりそう。そんな安易な考えで私はいいですよと答えたのだ。

進入禁止区域
テヌート








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