慰めて
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今日は朝から部活だった。合唱部の部長をしている私。もう少しでコンクールが来ているので、時間が無いので練習練習の毎日だ。今日は学校が朝までしか使えないと言う事で昼で部活は終了だった。帰ったらとりあえず寝るかと考えながら家のドアを開けた。
「ただいまー」
「おかえりー。丸井君来てるわよ」
「え? ブンちゃん? いないじゃん」
「ういの部屋で待ってて言ってあるから」
「ちょっと! 勝手に上げないでよ!」
「じゃ、母さん仕事行ってくるから」
「母さん!」
あーもう能天気の人だな。母さんのいってきますを背に階段を駆け上がった。バッと自分の部屋の扉を開けると、母さんが出していたジュースを飲んでいた。
「おかえり」
「ただいま……って。少しは部屋入るの遠慮してよ」
「いや、今更遠慮すんのもなぁ」
私とブンちゃんは幼馴染だ。確かに部屋に入られるのも特に嫌という訳でもないけど。やっぱりいない時に勝手に上がられるのは、少し気分が悪い。そういえば、部活は? 今日朝しか学校使えないから珍しくまるっと1日休み。
「そうなんだ。で、何の用? 別に遊びに来たって無邪気な年でもないでしょーが」
「……彼女と別れた」
「何? 愚痴りに来たの? そうういうのはテニス部の皆さんにしてください」
「いや、話せるやついねーし」
何で仁王君とか切原君とかいるじゃん。赤也には話したくない。それに、ああ見えて仁王はこういうの不得意だから。……え? マジ? まぁ、それはいいや。で、別れたから何?
「冷たい女。励ますとかそういうのあんじゃん」
「励ます……。ブンちゃんにならまたいい人見つかるよ!」
「そんな無理矢理な励ましいらね」
人にモノ言っておいてなんて態度だ。失礼なヤツだ。ジュッと最後までジュースを飲んだブンちゃん。いきなり静かになってグラスを見つめる。その目はどこか寂しそうで、彼女に本気だったんだなって思った。
「何でフラれたの?」
「テニスばっかな俺に嫌気がさしたんだと」
それはそれは。ただのミーハーな子だったんだね。まぁ、いいじゃん? 付き合って半年だっけ?
「おう」
「よかったじゃない。そんなブンちゃんの生きがいの様なテニスを否定する女と早く別れて」
そうそう。正解だよ。と1人でケラケラ笑っていたら、ブンちゃんがいきなりバンッと机を叩いた。……どうした?
「俺がどれだけ本気だったか。俺がどれだけテニスが好きか。本当に好きだったから悔しくて」
少し涙目になっているブンちゃん。空気を変えようとお菓子パーティーしよ。お菓子パーティー。ねっ? と声をかけた。
「こうなりゃ、食って食って食いまくる!」
「よし。じゃ、コンビニ行こう」
慰めて
(次はアイツが後悔するくらい、いい恋してやるぜぃ)
(それ女の子のセリフだよ)
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