ブサイクケーキ
.
「ただいま」
帰るといつもならしない美味しそうな匂い。リビングを覗いてみると、ういはキッチンにいた。よほど料理の方に集中してるみたいで、俺に気づかない。驚かせてやろうとそっと近づいて背後に立った。
「わっ! おかえりなさい!」
「ただいま。何作ってるの? 珍しいね」
「……そのケーキを作っていまして」
「ケーキ……ねぇ」
チラッと横を見ると黒く焦げているやつ。あともうちょっとなやつ。こんなに失敗したのか。今オーブンに入ってるやつもそろそろ焦げそうで、慌ててとりけしボタンを押す。
「今焼いたのがちょうどいいじゃないか。これに飾りつけたら? クリームは準備できてるみたいだし」
少し悲しそうにしているういに、着替えてくるねと言い着替えに向かう。……今日は俺の誕生日。誕生日プレゼントは何がいいですか? と朝出掛ける前に聞いて来たういに俺は何もいらないよと答えて仕事に出た。少し冷たかっただろうか。でも、まさかあの怠け癖のヒドイういがケーキを作ってくれるなんて思いもしなかった。着替えを終え、リビングに戻るとケーキにデコレーションをしているういがいた。
「相変わらず不器用だね」
「……これでも頑張ってるんです! あっ!」
チョコで書こうとした精市さんおめでとうの字がブレブレ。それを見てさらに愛しく感じる。可愛いな。
「一応出来ました」
「いただきます」
一口食べると手作り感満載の味がする。ういも食べなよとフォークを渡してういも一口食べる。そして更にへの字になっている眉がさらに下がる。
「甘過ぎましたね。ごめんなさい。私がコレ食べます」
「うい」
俺は一口一口、口に運ぶ。甘いけどういが作ってくれた事を考えるとどうって事はない。
「精市さん! いいです!私が」
「うん。俺好きだけどな」
「何でですか! 精市さん甘いの苦手じゃないですか」
「ういが作ってくれたものならなんでも美味しいけどね。ごちそうさま」
元々小さかったケーキ。あっという間に完食。ういを見てるとどこか慌てている様子のうい。可愛くて可愛くて抱きしめる。
「ありがとう。美味しかったよ」
不細工ケーキ
(キスを一口)
(お誕生日おめでとうございます。精市さん)
+++
普段干物の女の子が頑張った話。幸村さんの対応が冷たい気がする。干物部分に呆れてるけど離れられない幸村さんみたいな?あれですね、ほっとけないみたいな。誕生日にこんなでごめんなさい。改めて誕生日おめでとうございます!
.