男前彼女
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「先輩! コレもらってください!」
「う……うん」
遠くから宍戸が笑う声が聞こえる。笑うなよ。しかし、なんで私はこんなにもらえるんだろうか。でも女の子は可愛いから断るなんて出来ないし……。
「おら、部活行くぞ」
「うん」
お前今日何個もらった? えーと15? もらいすぎだろ。そんな会話をしながら部室のドアを開ける。部室にはラッピングされた箱の山がそれぞれに出来てる。
「ういちゃんは今回何個もらったん?」
「半笑い気味に聞くな。忍足。15個でした」
「先輩すごいですね!」
何かあまり嬉しくない感想ありがとう。長太郎君。ガチャと入ってきたのは跡部。
「うわー何その紙袋」
「お前も相変わらずもらってるんだな」
「あーうん。そうなんだよね」
チラッと見ると不機嫌そうな若が見える。先にコート出ていますと出て行ってしまった。
いつもの練習が終わって、着替えを済ませそれぞれ帰って行く。帰る頃には私のチョコも2つ増えていた。
「どんだけもらってるんですか」
「若だって私がいるのにどれだけもらってるのよ。断りなさいよ」
「断っても勝手に置いていくんですよ。迷惑極まりないですね」
私と若のため息がハモる。あー気分が悪い。ふと鞄に入れていた濡れせんの存在を思い出す。さっさと帰ろうとしている若を引き止める。
「ちょっとコレ。忘れ物!」
「コレ……濡れせんじゃないですか」
「チョコより喜ぶんじゃないかと思って。嫌なら返してよ」
「……せっかくなんでもらっておきますよ」
「何、その態度!」
スタスタと歩いて行ってしまう若を後ろから追い掛けた。
男前彼女
(好きですよ、先輩)
(それずるい)
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