雪道の温かさ

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昨日から降り積もり続けてる雪。朝起きて、もしかしたらと携帯を手に取った。予想通りディスプレイには幸村精市の文字。部活中止にしたから散歩でもしない? 二言返事。マフラーを巻いてコートを着て待ち合わせ場所に向かった。

待ち合わせ場所に行くと、同じくマフラーを巻いてコートを来た精市が立っていた。向こうがこちらに気付いた。おはよと挨拶すると向こうもおはようと返してきた。散歩って事はブラブラするの? 特に考えてなかったなと笑った精市。とりあえず待ち合わせ場所から離れることになった。

「うー。寒い。やっぱり家の方がいいじゃない?」
「いいじゃないか。雪道を歩くのも」

私は降り積もる雪の上を歩く。後ろを振り向くと自分の足跡が出来ている。そういえば、精市が倒れたのもこんな冬だったな。

「泣いてばっかだった」
「何がだい?」

声に出してしまっていた。精市が倒れたと聞いた日から私は毎日の様に、お見舞いに行った。精市がみんなを遠ざける様な言葉を言うまで。そんな中で私は、精市の前では絶対に泣かないという事を決めた。だから、病院から出てきた時はいつも泣いていた。

「泣いてたんだ。私。精市の前では泣かなかったけどさ。テニス部の人達に凄い励まされたんだよね」
「そうだったんだ。それじゃあ、みんなにお礼を言っておかないとね」

感謝しないとね。後ろを見ると向こうの方の足跡がもう消えかかっている。雪はまだ細かく降っている。

「でも、よかったよ。今こうしてういと歩けてる訳だし」

そう優しく微笑んだ精市。本当にその通りだ。それに、と続けた精市。

「こうやって手を繋ぐ事もできるしね」

そう私の手が精市の手で包み込まれた。温かい手だ。

「これからもずっと一緒にいようね」
「ういもずっと俺の隣で笑っていてくれ。もう泣かす事はしない」


雪道の温かさ
(ちょっと! 雪玉ぶつけないでよ!)
(俺が元気になった証拠だよ)


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黒くない幸村君です。初雪記念。最後やっぱ中学生だろうという事で。冬で幸村君と言ったらこの話題しか出てこなかった。すみませんです。

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