不似合いなサンタ

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今日はクリスマス・イブ。なのに、この連中はテニスの練習をしている。勿論マネージャーである私も当然いつもの様に、サークルに参加している。あの中学・高校と、威厳が変わらない幸村部長が明日は休みとでも言わない限り、今年の冬休みも潰れるだろう。と言っても、私の彼氏はクリスマスとか興味なさそうだしな。どうせ、休みでも稽古だとか言って相手なんかしてくれそうもない。

「やぁ、うい。クリスマスイブなのに、マネージャーの仕事ご苦労様」

爽やか笑顔で、近づいて来た幸村部長。わかってて話しかけてくるこの人はやっぱり魔王だ。

「まぁ、いいですよ。どうせ相手なんてしてくれなさそうですし。私、ちゃんと愛されてるのかな?」

そうこぼすと、幸村部長は微笑んだだけだった。何考えてるんだこの人。そう考えると付き合い始めの頃からイベント事はテニスの合間に私が、無理矢理詰め込んでるんようなもの。今更何も求めやしないけど。そんなのは、付き合う前から覚悟はしていたし。

「よし! みんな今日はここまで。せっかくのイブだから、楽しみなよ。明日も休みでいいからね」

唐突な事を言い始めた幸村部長。彼女がいる者は携帯を取り出したり、いない者はこのあとどうするかなどの話でざわつき始めた。んー。急にか……。とりあえずケーキ買って弦一郎の家押しかけるか。

「真田。今日は道場で稽古なんてしてないで、ゆっくり休むんだよ。後、うい借りてくからね」
「待て、幸村。ういを借りていくとは……?」
「別に変な事はしないよ。行くよ、うい」
「えっ。ちょ、幸村!!」

強制的に腕を掴まれ、幸村の車に乗せられた。


「弦一郎、こんなの興味ないよ。」

車に乗せられた私は幸村の家に連行された。そこで、クリスマスプレゼントと言われ渡されたのは、ミニスカサンタの衣装だった。魔王様の後ろに見える黒いオーラに勝てず着てしまった。着たら着たで、さっさとまた車に乗せられる。ちょっと近所の人たちに見られると恥ずかしいよなんて言っても幸村は耳をかさない。とりあえず行き先を聞いてみると、真田の家だよ。なんて言われる。そして、上の会話に戻る。

「大丈夫。大丈夫。真田も堅苦しい奴の前に男だからね。だって、別に普通にしたりするでしょ?」

この男はプライバシーも関係無しに聞いてくるのか。悪気もなく。少しは気を使ってほしいものだ。

「…………」
「黙ってるって事は否定しないって事だよね? よし、着いた。いってらっしゃい」

とてもいい笑顔で見送られ、私は仕方なしに、車から降りた。とりあえず、このまま家に帰るわけにもいかないから、仕方なくインターホンを押した。あっ。家族の人が出たらどうしよう。それか本人自体稽古に明け暮れていたらどうしよう。という心配もよそに、弦一郎が出てきた。私服な弦一郎。出て来た瞬間、固まってしまった。

「……ごめん。寒いからとりあえず家入れてくれないかな?」

なんとか首を縦に振った弦一郎。生足で、スカートなんてギリギリだから寒いのだ。玄関先で白いポンポンがついた赤いロングブーツを脱ぐ。和な家の玄関先にへんてこな光景が出来あがった。いつものように、弦一郎の部屋に向かい、畳に座った。全く可笑しな光景だ。

「この家にこんな格好似合わないね」

この格好に慣れてきてしまっている私はいいのだが、未だに弦一郎はボーッとしてしまっている。それもそうだろう。今までこんな事格好見せたことがないのだから。でも、その持ち前の精神で何とか戻ってきた弦一郎は、私の前に座った。よく見れば少し顔が赤い気もする。

「何で、そんな格好をしているのだ」
「幸村からクリスマスプレゼントだって言われて……。言っておくけど、自分から着たわけじゃないよ? 強制的にだからね」
「……そうか」

アイツは何を考えているんだとかブツブツ呟き出した弦一郎。

「そういえば、家族は?」
「クリスマスで、甥の家に行ってる。帰って来るのも年末とか言っていたな」
「あれ? 弦一郎行かなくて良いの?」
「サークルや道場の稽古があったから、行くのはやめたのだ」

という事は、この家には私と弦一郎の2人きり。なぜか変に意識し始めている自分を冷静にさせようと、回避方を考える。そして、何よりさっきよりも顔が赤くなってきている弦一郎を見ていると、こっちまで恥ずかしくなってくる。着替えた方がよさそうだな。今日サークルに着ていった服は幸村の家だし……。確か着替えをこの間この部屋に置いていったはず。

「ねぇ、私の服ってどこにある?」

探そうと思って立ち上がったら腕を弦一郎に掴まれた。どうしたの? いや……、何でも。だったら服……。次の瞬間掴まれた腕を引っ張られて、あぐらをかいている弦一郎の上に倒れこんでしまった。

「……いたー。大丈夫? 弦一郎?」
「うい……」

後ろから力強く抱きしめられた。普段こんな事をしない弦一郎に戸惑ってしまい、私まで顔に熱が集まってしまう。

「別に着替えなくてもいいんじゃないか?」

後ろから耳元で低く囁かれ、ぐいっと顎を掴まれ後頭部に手を回された。顔が近い。さっきとはまるで真逆だ。私の方が顔が赤い。やっぱり幸村の言ってたとおりか、なんてぼやーっと考えていたら、私の唇は弦一郎の唇で塞がれていた。舌が唇を割って入ってきて、口内を犯される。

「……ん。……あっ」

何度も何度も角度を変えて、キスをしてくる弦一郎。酸素が欲しくなって弦一郎の肩を押すと、私の唇についた唾液を舐めとって、唇が離れた。

「ハァ……ハァ……」

肩で息をしている私をまた抱きよせて、また耳元で囁かれた。


不似合いなサンタ
(このままいいよな?)



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大学3年設定。サークルの仕組みとかよくわかってないです。真田がパラパラを踊るという変な想像をしたお詫び。変な真田ブームが起こっています。今回コレ書いて判った事はゆっきーは常に何を考えてるか判らない人らしいです。私から見て 笑 真田はエロいと思うよ。男前だとも思っている。彼女になんか甘々だと思う。

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