5.近づいて来た顔は切なそうで、
朝目を覚ますとウイが俺の胸に顔を埋めて寝ていた。頬には泣いた後がある。昨日から調子狂うことばっかだ。振り払って起きればいいもののそうすることも出来ずに俺はウイの目が覚めることを待つ事にした。いつもいつもちょこまかしているウイを見ているせいか寝息を立てて子どものようにぐっすり寝ているウイは新鮮で。そして何度見てもやはり泣いたのだと思わせるそれ。何で何で泣いたりなんかしているんだ。
「ん……。サー、おはよー」
寝起き特有の掠れた声で呼ばれた。おはようと返すと精一杯に腕を身体に回してきた。たまらなくなって自分からウイを抱きしめた。
「なぁ、俺が好きだって言ったら笑うか」
「笑わないよ」
自分の年を考えろよと自嘲する。返答も返答だ。YESでもなければNOでもない。笑わないならそばにいろ。もうどこにも行くな。思いが止まらないなんて柄じゃないのはわかっている。顔が見えないがケラケラと笑い声が耳に届いた。
「サーってこんな人だったっけ? ごめん。ちょっと可笑しくて」
俺も今自分でそう思っていたところだ。やっぱりそうだよね。でもね。私サーの思いには答えられない。だってね。私なんとなくわかるから。
「今、一緒に入れてもすぐ一緒にいれなくなるよ?」
「それは俺が捕まるとでも言いたいのか」
首を横に振ったウイ。それ以前に雑務でも私は海軍だから。一応七武海と言えど海賊と付き合おうなんて考えてはいけない立場だし。
「頭悪いなりに考えてるの」
「何が頭悪いだ」
普段は頭の回転が悪いのー。だからこういうこともしちゃうの。
近づいて来た顔は切なそうで、
(唇と唇が触れあった)
(これが最初で最後。)
逃げ場がなかったのは俺の方だ
(また会いたいなーなんて間抜けたその声)
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