4.ベッドにいる顔は見えなくて、

「やっぱりウイは才能あったみたいね」
「……そうだな」

あの日からよくここに遊びに来るようになったウイ。俺がコツを教えたらみるみると上達した。若いヤツは飲み込みが早い。ウイのことをぼんやりと考えていると今日はそのまま帰るみたいだからここに寄らないそうよ。との声。……あら? 何だか残念そうね。続いて聞こえた声は余計で。

「うるせぇ。……少し出掛けてくる」

私も行かなくてはいけないところがあるから。もしかしたら明日帰って来る事になるかもしれないからその時は連絡するわね。その言葉を背に俺は部屋を出た。


辺りは随分暗くなってしまった。でもレインディナーズはこれからが人寄せにはうってつけな時間。地下に行くと、俺の部屋に明かりがついている。ミス・オールサンデーが帰って来たのか。いや、それはない。さっき明日に帰ると言っていた通りに連絡があった。誰か忍び込んだか。どう考えてもそれはあり得ないが……まさかなと思いながら扉を開けたらおかえりーとあどけない間抜けな声。ウイが俺の椅子に座ってくつろいでいた。

「どうやって入った」

鍵はしっかりかけていたハズだが。そうするとあれくらい楽勝と返事がきた。こんな小娘に開けられてしまうような鍵はさっさと変えてしまおう。まぁただの小娘でない事は確かだが。今日はそのまま帰ると聞いていたが。

「……やっぱ顔見たいなぁって」

来ておいてよかったよ。さっきみたいな笑顔はなく珍しくしんみりした雰囲気を漂わせている。ベッド借りるねーと勝手にベッドに横になったウイはすでにいつも通りの雰囲気に戻っていた。この俺に心配をかけるとは。まだ簡単な仕事が残っているため体温がまだ残る椅子に座ったらあの笑顔が消えた理由がわかった。机に置きっぱなしだったユートピア作戦の資料。

見てしまったのか。ニコ・ロビンを逃がすほどの頭脳の持ち主。何も言わないってことは俺には何も協力しようとは思っていないわけか。別に追求しようとも思わない。



ベッドにいる顔は見えなくて、
(お前は俺がどうなるかわかっているみたいだな)
逃げ場が無くなっているのは俺なのか



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