3.見上げた先に笑顔

振り返ったそこには俺の頭から離れなかった人物。当の本人は呑気にソファでくつろいでいる。口ぶりからするとミス・オールサンデーは小娘のことを知っている。なぜだ。疑問はたくさんあるがまずどうしてここにいるのだと聞いてみる。

「えーとね。海軍の船に乗ってきたから。だってあそこに留まっていてもつまらないんだもん」

どこかに出掛けたくて遠出する船を港で探していたらしい。その中でアラバスタに向かう船があったので、その船に乗ってきたと言う。

「なぜアラバスタなんだ」

こんな何もないところに来ても面白みがないだろう。そう続けると元帥にこの間の人はどこに帰ったの? って聞いたらアラバスタだって言ったから。ただそれだけ。なんか会いたくなっちゃってと笑顔をこちらに向ける。

「私も不思議なんだー。そういえば私貴方の名前知らないや。教えてくれる?」
「サー・クロコダイルだ」
「クロコダイル……。長いからサーでいい? 私は」

知っている。ウイだろ? 食い気味に名前を言うと知ってたんだーと間延びした声が返ってきた。

「お前はなんで海軍なんかにいるんだ」

特に仕事なんてしていないだろう。失礼な。一応雑務としてあそこにいるんだけどなー。それにお前じゃなくてウイって呼んでよ。

「……ウイは何で海軍にいるんだ」
「親を亡くして行き場が無かった私を元帥が拾ってくれたの」

親戚とかそういう人はいなかったし、行くあてがないならここに居なさいって言われてお世話になっています。そういう理由か。

「それとニコ・ロビンとはどういう関係だ」

それにしてもなぜ俺はこんなにもこの小娘を気にしているのだろう。今までに接した事がないタイプだからという事にでもしておくか。ロビンさんとは、2年くらい前に会ったの。その声でウイに向き直る。

「ロビンさん海軍に追われてるでしょ? 前たまたまロビンさんを追ってる船に居合わせてその時に」

街をうろうろしている時に会ったそうだ。経緯は違うとはいえ親を亡くした同士意気投合したという。

「それから海軍に捕まらない様にちょっと情報提供したりね」

意外と危険人物だったりするのか。今までの話しを聞いていると気分屋な所もあるようだ。自分が好いたヤツにはとことん懐くと言った所か。

「海軍のヤツらは嫌いか?」
「感謝はしているよ。好きではないかな」

スモーカーさんは好きだけど。上の言うことは聞かないと噂のスモーカー。確かにウイが好きになりそうな人物だ。

「じゃあ、私はそろそろ船に戻るね」
「その船いつまで居るんだ」

扉に向かって歩くウイの背中に声をかける。確か五間日くらいだったかな。それを聞くが早いが俺は砂になってウイに近づき後ろから抱きとめた。身長差がだいぶあるために小さいウイは俺の中にすっぽりと収まる。

「五間日。船が出るまでここに泊めてやる」
「えー、今の瞬間移動?」

話しが噛み合わないのに思わず笑いそうになる。面白いヤツだ。俺はスナスナの実を食べた砂人間だ。そう言い右手の掌から小さい砂嵐を起こす。すごーいと驚くウイ。砂嵐を止めて再びさっきの質問。

「いいけど、私ギャンブル弱いみたいだから」

さっきやってみたんだけど全然勝てなくて。俺が直々に教えてやるよ。上手くなったらおもしれぇぞ。


見上げた先に笑顔
(ホントに?)
(あぁ)


逃げ道を塞いで、一先ず捕まえた



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