2.振り向くとそこには、
手続きは少々時間がかかって、帰るのは夕方頃になってしまった。応接室から逃げた以来姿を見せなかったウイ。手続きが遅れた事に関しての苛立ちなどすでに冷めてしまったのだが、もう一度会いたいと思っている自分がいる。
「今日はすまなかったね。これからいろいろよろしく頼むよ」
そう玄関口で話しをしていると、柱に人が覗く影がある。俺の視線に気づいたセンゴク元帥がその影に視線を向けるなりもう怒っていないからこっちに来て謝りなさいと子どもをあやす様な声で、ウイを呼んだ。ばつの悪そうにこっちに来て俺の前に立った。
「今日はごめんなさい」
それだけ言うとバーッと走り去って行ってしまった。センゴク元帥を見ると驚いた表情をしている。話しを聞くと今回の様な事をして謝ったためしは、あまりなかったようだ。
「それは俺が客人だったからだろう」
「さぁな。誰にも懐かなくて困ってるんだ」
さぁ、送っていこう。その声を聞いて俺は、海軍本部を後にした。そういえばあの小娘は海軍の何者なのだろうか。
七武海になってから数日。特に変わらない忙しい日常を過ごしていた。しかし今日は珍しく特にする事がなかった。読んでいた本にも少し退屈してきた所にノック音。今日は会う事がないと思っていたミス・オールサンデーが入ってきた。
「どうした」
「強い人がいるのよ」
「それがどうした」
「いえ。見かけ的にずいぶん子どもっぽい気がしたから。ちょっと耳に入れておきたかっただけよ」
ウイの姿がなぜか過ぎった。まぁ、こんな所に来るなんて考えられないし。まさか……な。
「ふん。頭の片隅にだけおいておこう。ただの偶然かもしれないだろ」
「そうね。せっかくの休日を邪魔して悪かったわ」
そう言って出て行ったのを見て、また本に視線を落とす。しかし全く頭に内容が入って来ない。なぜ俺があの女の事をこんなに気にかけているのか。そんな事を考えている。
コンコン
またもノック音。入れとだけ返事をすると入ってきたミス・オールサンデーの隣にいたのは男。少し肩を落としている自分に驚いた。そうだ、やっぱりこんなとこに来るハズかない。
「さっき報告に来たヤツか。何で連れてきた」
「随分気にしていたみたいだから連れてきたのよ」
この男は俺を見る限りクロコダイルさんだ! と嬉しそうに声を上げた。ここの住民か。特に話すことは何もない。年くらいは聞いておくか。興味もなさそうにいくつだと聞いたら20だと答えた、それこそ特に問題は無い。確かに少し少年っぽい様な気もするが。アラバスタの英雄との地位があるゆえあまりこの男にこの部屋にいてもらうわけにはいかない。隣にいるミス・オールサンデーにもう返せと耳打ちをする。
「わかったわ」
急に呼び出したりしてごめんなさいね。と男に詫びを入れながら扉を開けて一度こちらを振り向くと、その子の年も聞いておいたら? と俺が座っていたソファを指差した。
振り向くとそこには、
(何か難しそうな本読んでいますね)
(お前いつのまに)
今度は逃げ道はないのだ
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