守りたいもの
一度だけ真剣に言われたことがある。付き合い始めの時だった。相変わらず勝手に家にいた秀一さんは私に真剣な話しがあると言った。それは本当に真剣な話しでありそして少し寂しい話しだった。いやでも彼と付き合っていくのにはそれなりの覚悟が必要なんだとまだまだ子どもな私の脳内でも理解できた。
それは、俺と付き合っていることはなるべく隠せということだった。ある組織を追っている今に関係あらずいつどこで俺やエフビーアイに恨みを持っているやつがういに何をしてくるかわからないと言った話しだ。普段仕事の話しはしないのでそういうことに意識はなかった。未だにすごい職業の人と付き合っているという実感しかなかったから。
「はい。わかりました」
まぁ、滅多にないことだが。何か不審なことがあったらすぐに言えということだったが付き合い始めて2年。危険に晒されたこともないし変わりのない日常を送っている。友達に彼氏のことを詳しく言えないのが寂しいだけで。
「そういえば秀一さん。秀一さんと付き合ってるのなるべく隠せって話し覚えてます?」
「まさか。何かあったのか?」
最近ピリピリモードの秀一さんにこの話題はまずかったかな。目が怖いよ。目が。この間拳銃を持ってるところを見たばっかだから尚更怖い。いやいや、何もないですよ。と即座に答えればいつもの優しい目に戻った。プロ怖い。
「もし仮にですよ。仮ですからね。私が狙われたら秀一さんどうします? 別れてこの女は関係ないとか言うんですか?」
「別れもしないし、そんなことも言わない」
何か秘策でもあるんですか? と聞いたらそんなものもないとのこと。え? じゃあ、どうするんですか? 私、死ぬの?
「死なせもしない。ただその相手を徹底的に痛めつけるだけだ」
そう言った秀一さんは笑った。秀一さんを怒らせるのは止めた方がいいと悟った瞬間だった。